研究課題/領域番号 |
18K13780
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
長津 裕己 中央大学, 理工学部, 助教 (60804987)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 制御工学 / 機械学習 / 力制御 / 知能ロボティックス / 知能機械 |
研究実績の概要 |
近年、先進諸国では少子高齢化が進行しつつあり、ロボットによる人間の行為の代替技術が求められている。特に、熟練技術者のもつ技能の後世への継承は重要な課題である。 そこで本研究では、視覚および力覚情報に基づくマルチモーダル機械学習による、人間・ロボットが相互にスキルを教示するシステムの実現に向けた研究を行う。はじめに人間がロボットに対してスキルを呈示し、対象物が新しいものに取り替わった場合には、保存された動作データ(熟練者のスキル)をもとにロボットが新たな対象に適応して動作を実現し、新しいスキルを習得する。そしてロボットが得た新たなスキルを人間(被教示者・非熟練者)に呈示することで別の人間に対してスキルを教示する。このように、スキルの継承と上達を伴う新しい人間・ロボット間の教示システムの実現を目指す。 本年度において、動作継承制御系の基となる動作保存・再現制御を検証するためのプラットフォームとして2自由度マスタ・スレーブシステムの構築を行った。また、研究協力者らとのディスカッションを通じて力覚情報を画像情報へと落とし込むことにより、画像認識等に用いられてきた機械学習の手法を人間動作のスキルの認識やクラスタリングに適用することが可能となるとの着想を得ることができ、現在検討を進めている。 さらに、フレキシブルアームなどの柔軟構造を有するシステムに対しても、マスタ・スレーブシステムに基づく動作保存方法が、ロボットに直接手伝えで動作のティーチングを行う方法と比べて有用であるという知見を得ることができた。また、柔軟システムにおける負荷側センサレス力推定手法の検証および倒立振子などを含む劣駆動系への本システムの適用についても検討を行うことができた。これらから得られた知見は動作保存・再現制御における汎用性および適用対象の拡張において重要となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究協力者らとのディスカッションを通じて力覚情報を画像情報へと落とし込むという、研究開始当初には無かった着想を得ることができ、これをマルチモーダル感覚情報へ拡張する可能性が見いだせた。また、教示者および被教示者の加える作用力情報と対象環境からの反作用力情報の分離を実現するためのマスタ・スレーブシステムについても、自由度を増設した動作の検証も開始するとともに、柔軟システムや劣駆動システムなどにおいて、動作保存・再現制御における汎用性および適用対象を拡張するための知見を得ることが出来ている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、マルチモーダル感覚情報を統合した動作モデルおよびマルチモーダル機械学習について検討を行う。また、マルチモーダル感覚情報を画像情報へと変換することで、画像認識等に用いられてきている既存の機械学習の方法を人間動作のスキルの認識やクラスタリングに拡張することについて検証を行う。そして、記録された動作から適切な動作を選択および統合して再現するための動作再現制御について検討する。さらに、新しい環境に適応した動作を、ロボットから人間(被教示者)へ逆に呈示する制御系の構造について検証する。この構造は被教示者を環境として捉え、動作再現制御器を拡張することで可能となると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の計画通り2自由度マスタスレーブシステムの構築を行うことができたため、次年度以降の計画であったマスタ・スレーブシステムの自由度増設を前倒しして行うこととした。そのために、自由度増設用のモータの購入のため前倒し支払請求を行ったが、請求可能額が10万円単位であるのに対し、本研究で使用するモータはマスタ・スレーブシステムの2台分で10万円以上20万円以下であるため差額が生じた。この差額は元々次年度に使用する予定の学会参加のための旅費および論文投稿料などに割り当てる予定である。
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