本研究では次世代都市インフラシステムの基盤技術創出のための理論的構築を目指して、競争関係にある個人最適の均衡状態と全体最適の矛盾を解消する動的インセンティブ設計法の開発を目的とする。この目的を実現するために、本年度は大きく分けて次の2つの課題を実施した。(II)提案する動的インセンティブの効果解析(III)電力システム及び交通システムによる提案手法の有効性検証。 課題(II)について本年度は、前年度までに得られた課題(I)の成果である動的インセンティブ設計・制御理論はエージェントの最適行動(制御入力)の耐戦略性の保証を与えるが、実現するには正確な私的モデル情報の事前提出を前提としている点に着目した。具体的にはシステム制御分野では標準的数理モデルである動的線形制御システムに対する提案インセンティブモデルの下で、エージェント群がモデル情報の戦略的提供した場合の社会システム全体への悪影響を理論的解析するとともに、数値シミュレーションを通して定量的に分析した。 課題(III)について、前年度までは電力システムを中心に分析したが、本年度は交通システムへの適用を検討した。具体的には配車サービスの経路選択最適化による交通流適正化を検討した。まず、対象とする交通流制御モデルと評価関数がこれまで検討している枠組みに帰着できることを明らかにした。つぎに、経路積分制御による等価表現とモンテカルロ法を用いた並列計算により実時間最適配分手法を提案した。また、確率的な流入車両と動的性の存在下でのWardrop均衡との関連性について数値例を通して分析した。さらに本枠組みを一般車へ拡張する際、インセンティブの受容者であるドライバーの判断に関する実験検証を検討した。
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