研究課題/領域番号 |
18K13786
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
志村 洋介 静岡大学, 電子工学研究所, 助教 (40768941)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ゲルマニウム / スズ / 熱電変換 / 結晶成長 / 多結晶 / 薄膜 |
研究実績の概要 |
多結晶シリコンゲルマニウムスズ(SiGeSn)三元混晶における粒界および重いSn原子による熱伝導率の低減を目指し、本年度は主に、スズナノドット(Sn-ND)をテンプレートに用いた多結晶ゲルマニウムスズ(GeSn)および多結晶シリコンスズ(SiSn)の形成技術開発に関する研究を行った。酸化シリコン(SiO2)膜上に堆積したGeおよびSnの混合アモルファス薄膜に対し結晶化熱処理を施した場合には低温(100~225 oC)熱処理の場合でも凝集が発生した。Ge薄膜のみ、およびSn薄膜のみの熱処理では凝集が発生しなかったことから、GeとSnの混合が凝集を促進することが示された。これに対し、予めSn-NDを形成した後に熱処理をしながらGeを堆積した場合、Sn-NDが面内で分離しておりGeとSnの混合領域が制限された結果凝集が抑制され、さらにSn-NDを種結晶としたGeSn薄膜の結晶化が実現可能であることを見出した。同様の手法で、2.2%のSn組成を有するSiSnの結晶化を実現した。このSn組成はSnのSi中への固溶限(0.1%)の20倍以上である。 また、熱伝導率に影響する結晶性の影響を除外するため、ラマン分光法で評価した多結晶薄膜中のアモルファス領域と結晶化領域の割合が同程度の多結晶GeSn薄膜と多結晶Ge薄膜について、時間領域サーモリフレクタンス法を用いて熱伝導率を評価した。本手法で形成した多結晶GeSn薄膜の熱伝導率は、同程度の結晶性を有する多結晶Ge薄膜より小さく、Sn導入が熱伝導率低減に有効に寄与することを実験的に示し、これを学術論文にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
多種のフォノン散乱機構の複合導入を目指し、Sn-NDと多結晶膜との界面をもフォノン散乱に利用する計画であったが、非常に低温(100 oC)で多結晶GeSn薄膜を形成した場合においてもSnがほとんどGe中に取り込まれ、Sn-NDが消失することが、透過電子顕微鏡と元素分析により明らかになっている。ナノ構造を多結晶内に作りこむにはSn-NDのサイズや密度の増大、界面層の挿入などの検討が必要である。また、今回新たに導入したSi堆積用電子銃の初期不良がSiGeSn三元混晶形成の遅延を引き起こしている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ナノ構造を内包したSiGeSn三元混晶の形成を目指すとともに、特性および物性評価に注力していく。 やや遅延している多結晶SiGeSn三元混晶の形成を急ぎ、多結晶GeSnおよび多結晶SiSnとの比較によって混晶化が熱伝導率や結晶構造に与える効果を実験的に明らかにする。また、多結晶形成時にSn-NDが消失する課題の対策として、上述の界面層の挿入などの効果を検証し、Sn-NDとの界面を利用した飛躍的な熱伝導率低減の実現を目指す。これらの電気特性、熱電特性の評価に加え、局所的な構造評価とフォノン分散の評価を組み合わせることで、特性変調の物理を明らかにすることにも注力していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していたSi蒸着用EBガンの購入費を少なく抑えられたため。 また、上述のように研究がやや遅延した結果、外部委託分析や学外実験施設の利用に掛かる費用が減少した。次年度には主にこれらの分析に関連する費用として使用する予定である。
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