研究課題/領域番号 |
18K13787
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
稲葉 優文 九州大学, システム情報科学研究院, 助教 (20732407)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ダイヤモンド / 選択成長 |
研究実績の概要 |
ダイヤモンド窒素-空孔中心(NVセンタ)を用いた汎用量子コンピュータの実現に向けて、ダイヤモンドオンチップの光導波路にNVセンタを閉じ込めた構造の作製を試みた。 2018年度には、ダイヤモンド基板上光導波路構造作製技術の構築と、導波路中のNVセンタの観測を行う予定であった。尖端放電型リモートプラズマCVD法による、SiO2をマスクとした、高品質な選択成長を実現した。ダイヤモンドの成長に用いられるプラズマCVD法は、高品質なダイヤモンド成長が可能である反面、選択成長の際にマスクを高速でエッチングする問題があり、選択成長には向かない。これに対し、リモートプラズマによるダイヤモンド成長では、マスクのエッチングを大きく低減でき、高品質なダイヤモンド選択成長が実現できることに着目し、これを実施した。論文投稿中である。 また、もう一つの提案手法である、トップダウン加工によるリッジ型導波路構造の形成に関しては、ダイヤモンドの架橋構造を形成することに成功した。ダイヤモンドに高濃度にイオン注入、高温アニール処理を施すと、表面下にグラファイト層を形成できる。これを犠牲層として、下地基板と分離したダイヤモンド薄膜層を形成した。また、酸素プラズマによるダイヤモンドの選択エッチングと合わせることで、ダイヤモンドの幅数マイクロメートルのワイヤ構造を形成することに成功した。これを、さらにNVセンタの濃度を制御することで、ワイヤ内の物理情報を光検出できる試料を用意できる状況に至った。 観測に関しては、所属機関の異動に伴い、進展していない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
九州大学への異動に伴い、ダイヤモンド中NVセンタの観測環境へのアクセスが困難となった。このため、2018年度使用予定であった予算も繰り越し、九州大学にて観測環境の構築と、新研究環境になじむ導波路形成の研究を行う。
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今後の研究の推進方策 |
九州大学への異動に伴い、研究環境が変化したため、研究内容を修正する。現所属では、微粒子の誘電泳動現象を利用したセンサ開発を行っている。これを、ダイヤモンドの窒素-空孔中心の研究に援用すべく、2019年度は、①ダイヤモンドの誘電泳動記述の確立 と、②ダイヤモンド誘電泳動によるダイヤモンド微粒子ナノワイヤ構造の形成と光学的評価 を行う予定である。 ①ダイヤモンドは絶縁体的性質を持つにもかかわらず、誘電泳動特性に関する報告は見当たらない。本課題ではダイヤモンドへの誘電泳動力が効果的に作用する条件を検討し、ダイヤモンド偽粒子による構造形成の指標とする。②ダイヤモンド微粒子の構造形成技術を利用し、ダイヤモンドのナノワイヤの形成を図る。ナノワイヤは、本研究の当初目標であるダイヤモンド光導波路の有力な候補であり、誘電泳動により簡便にナノワイヤが実現できれば意義が大きい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度中に所属機関の異動があったため、予算を計画に沿って使用できなかった。 2019年度において、新環境での研究環境構築、消耗品等の購入に、繰越予算を充当する予定である。
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