研究課題/領域番号 |
18K13789
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山田 晋也 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (30725049)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ホイスラー合金 / 熱電変換材料 / 薄膜 / 熱伝導率 |
研究実績の概要 |
近年、低環境負荷の新しい熱電変換材料としてホイスラー合金Fe2VAlが注目され始めているが、従来の熱電変換材料と比較して熱伝導率が一桁程度高く、熱電変換材料の性能指標の一つである無次元性能指数(ZT)が実用化の目安とされるZT > 1を満たすまでには至っていない。本研究では、研究代表者が最近開発したFe2VAl単結晶薄膜の低温形成技術を高度化し、その熱電性能を実用化レベルまで高性能化することで、IoT応用を指向した新型熱電変換材料への道を拓く。 今年度は、Alの一部をSiで置換したFe2VAl1-xSix薄膜の作製とその熱電特性評価を行った。その結果、Fe2VAl薄膜[~7.5 W/(m・K)]よりも熱伝導率は更に低減し、これまで報告されているFe2VAl合金系の中で最小値の熱伝導率[~3.9 W/(m・K)]を示した。これについては、ホイスラー合金の結晶規則度(原子レベルの構造の規則性)が熱伝導率を制御する上で重要であると考えており、熱伝導率の低減について新たな知見を掲示することができた。高いZTを実証するためには、ゼーベック係数の増大と電気抵抗率の低減も重要であるが、先行研究のバルク多結晶と比較して、Fe2VAl1-xSix薄膜のゼーベック係数は小さく、電気抵抗率は大きいため、ZTとしてはそれほど高い値が得られていない。今後、低熱伝導率は維持しつつ、元素置換や価電子数制御でフェルミ準位位置を制御してゼーベック係数の増大と電気抵抗率の減少を図り、ZTの増大を目指していく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Fe2VAlは従来の熱電変換材料と比較して熱伝導率が高いというのが課題の一つであったが、Alの一部をSiで置換したFe2VAl1-xSix薄膜において、これまで報告されているFe2VAl合金系の中で最小値の熱伝導率を示した。今後、ZTの値を高めるためには、ゼーベック係数の増大と電気抵抗率の低減が必要であるが、鍵となる熱伝導率の低減に関して重要な知見が得られつつあるため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ZTを高めるためには、低熱伝導率は維持しつつ、高いゼーベック係数の増大と電気抵抗率の低減を実現する必要がある。低熱伝導率を実現したFe2VAl1-xSix薄膜は、過剰なSi置換によりフェルミ準位の位置が擬ギャップのDOSの急峻な部分から少しズレている可能性があるため、元素置換や価電子数制御でフェルミ準位位置を制御し、ゼーベック係数の増大と電気抵抗率の減少を図る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
MBE用のるつぼを消耗品費として計上していたが、当初よりも消耗が抑えられたため、今年度に予定していた交換を行わなかった。ただし、消耗は進んでいたので、次年度の早い段階での交換を予定している。
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