研究実績の概要 |
昨年度、Ag-In-Zn-Oをスペーサー層前駆体としてCo2(MnFe)Geホイスラー合金層の間に成膜し、280℃で熱処理すると、3Mn+In2O3 -> 3MnO+2Inの酸化還元反応が起こり、その結果、Mn-Zn-Oマトリックス中に幅5nm程度のAg-In合金が分散したナノコンポジット構造のスペーサー層ができることを確認した。同様のナノコンポジット構造は前駆体にAg/In-Zn-Oの2層構造を用いた場合でも形成されることが確認されていたが、Ag-In-Zn-O前駆体の場合には50%の磁気抵抗比が得られるのに対し、Ag/In-Zn-O前駆体の場合では磁気抵抗比は30%と小さいことが謎であった。最終年度は、これら2種類の前駆体材料によって、ナノコンポジットのAg-In導電析出物のサイズの異なり、それによって強磁性層とのスピン抵抗のマッチングの程度が異なることを見出した。これによって磁気抵抗比が異なることが、他研究者によって報告されている理論モデルを説明できることを論文として報告した。 その他のスペーサー前駆体材料の開発として、Cu/In-Zn-O, Cu-In-Zn-Oを検討したものの、芳しい結果は得られなかった。これは、CuのIn-Zn-O中における固溶限が大きいことから、Ag-In-Zn-O前駆体のようなナノコンポジットが得られないためであると推察される。
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