研究課題/領域番号 |
18K13794
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
岡田 直也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (10717234)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | シリサイド / 半導体 / Cu / 拡散 / トランジスタ / デバイス / CVD |
研究実績の概要 |
新しい半導体薄膜である「遷移金属(M)原子内包シリコン(Si)クラスター(MSin, n: 7~16)をランダムに配列したアモルファスシリサイド膜(MSin膜)」において、MSin膜の遷移金属種MとSi組成nを系統的に変えることで、Cuイオンの拡散防止機構を明らかにすることを研究目的とした。今年度、様々なn値のWSin膜とCuの積層構造を作製し、熱処理による反応性を系統的に調べた。Cu/WSin積層構造では、WSin膜がほとんどSiで構成されているにもかかわらず、熱処理による相互拡散と抵抗上昇が抑えられた。特に、n=~8と~12では、Cu/SiO2およびCu/Taと同様に、300度の熱処理後も抵抗値がほぼ一定であり、高い熱的安定性を示した。WSin膜では、構成要素のクラスターが強固な共有結合を形成することで、優れた熱的構造安定性を持っており、Si原子のCu膜中への熱拡散が、抑えられている。また、第一原理計算より、WSinクラスター単体はn=8および12で低い電子親和力を示し、Cuからの電子供与を阻止する性質を持つ。従って、=~8と~12のWSin膜はCuのイオン化を抑制することで、反応が生じないと考える。以上より、WSin膜はSiリッチ組成であるにもかかわらず、Cuとの反応が抑制される。特にn=~8と~12で抑制効果が大きいことを明らかにした。これらの研究結果について、学術論文1件、国際会議2件、国内会議3件の発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、MSin膜のSi組成nを系統的に変える実験を行い、Cuイオンの拡散防止機構を、実験結果と第一原理計算の両面から詳細に調べた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、Cu以外の金属の拡散特性を調べる。拡散金属として、高い拡散係数を有するイオン性金属のNaとLiが候補となる。特に、Liは二次イオン電池材料として利用されており、MSin膜中のLiの捕獲密度が高ければ、負極材料への応用展開が期待できるため、この研究は技術的にも意義が大きい。さらに挑戦的な研究として、MSin膜のCuの拡散係数を外部電界や外部からのキャリア注入で制御することを試みる。これを動作原理として、Cu配線を断続する新規デバイスが可能となり、LSI製造後に回路接続を再構成可能な集積回路を実現できる。そのためには、MSin膜中の原子電荷を外部電界で変調できる1020 /cm3程度に制御する必要があり、MSin膜の材料特性と拡散防止機構の定量的な解明が重要となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していた実験を後ろ倒ししたため、外注分析費用分を次年度に使用する計画である。
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