研究実績の概要 |
新しい半導体薄膜である「タングステン(W)原子内包シリコン(Si)クラスター(WSin, n: 6~12)をランダムに配列したアモルファスシリサイド膜(WSin膜)」には、銅に対する特異的に優れた拡散防止機能がある。本研究では、様々な金属に対するWSin膜の拡散防止機構を明らかにすることを目的とする。今年度は、特にCoに対する拡散防止特性を調べた。CoはSi中で高い拡散係数を有し、低温でシリサイド化する特徴を持つ。様々なn値のWSin膜 とCoの積層構造を作製し、熱処理による反応性を系統的に調べた。WSin/Si界面が元より優れた熱的安定性を持つことに加え、WSin挿入層(n>6)がCo原子の熱拡散をバリアして、Si基板とCo電極の反応(シリサイド化)を阻止することがわかった。このCo拡散防止効果を明らかにするために、700℃熱処理後のCo/Si直接接合、およびCo/WSin/Si接合の断面STEM観察、およびEDX分析を行った。Co/Si直接接合では、Coシリサイド化により界面がSi基板側へ移動するのに対し、Co/WSin/Si接合では、WSin挿入層により元の界面が維持されていた。WSin膜中では、構成原子のWとSiが強固な共有結合を形成することで、優れた熱的構造安定性を持っており、Co原子の熱拡散が抑えられている。これらの研究結果について、学術論文1件、国際会議3件の発表を行った。
|