研究課題/領域番号 |
18K13804
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
藤井 茉美 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (30731913)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ダイヤモンド / 酸化アルミニウム / 電界効果トランジスタ / 水素終端 |
研究実績の概要 |
ダイヤモンドは表面を水素終端化することでp型伝導性を示すことが知られている.水素終端表面の課題として,大気中において酸素終端表面よりも不安定であり,長期間大気にさらされるとp型表面伝導層の伝導性は劣化してしまう.そのため、デバイス応用の場合はゲート絶縁膜で水素終端表面を保護する必要がある.Al2O3は優れた電気的絶縁性を持ち,耐熱性にも優れているためダイヤモンドデバイスのゲート絶縁膜として有望である.ALD-Al2O3の原料ガスとしてはTMA(trimethylaluminum, (CH3)3Al)が広く使用されているが,本研究ではTMAに代わりメチル基の1つが水素と置き換わったDMAH(dimethylalminum hydride, Al(CH3)2H)を用いてAl2O3膜の形成と特性評価を行った. SIMS測定によってAl2O3膜中元素の分析を行ったところ,DMAH試料において,Al2O3膜中の炭素不純物の減少および水素が増加したことが明らかとなった. 作製したAl2O3/diamond MOSキャパシタのC-V測定およびI-V測定,また1/C2-Vプロットからフラットバンド電圧VFBを導出した.TMA試料ではVFB = 4.0 V,DMAH試料ではVFB = 1.7 Vであり,このようなVFBの正シフトはAl2O3膜中に負の固定電荷が存在することを示している.DMAH試料ではVFBのシフトが抑制されていることから,界面欠陥の低減および膜中の不純物低減により固定電荷が減少していると考えられる.また,MOSキャパシタのリーク電流がDMAH試料において抑制できた.従って,低不純物炭素,高水素のDMAH試料でダイヤモンド素子が高耐圧化することが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
目的としていた新規原料を用いたAl2O3成膜を実施し,リーク電流,C-V測定による固定電荷評価など基本的なデータがそろってきた.しかし,素子作製プロセスに用いた材料の劣化やリソグラフィ行程上の問題がいくつか生じ,これの解決に時間を要したためやや遅れている. また,研究代表者のライフイベントにより実験内容に制限が生じたこと,数か月間実験の実施ができなかったことが理由として挙げられる.
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今後の研究の推進方策 |
新たに担当学生をあて,研究員による実験補助を行うことで実験を円滑に実施する.研究代表者はこれまでと同様に,担当学生と共に実験に従事する. 薄膜の分析など,これまで研究代表者または学生が直接実施していたものを,技術職員など担当者に依頼する形で測定し,時間短縮を図る.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の妊娠・出産により,予定していた出張をキャンセルしたため,旅費および学会参加費等が不要となった.また,同じ理由により予定していた実験が延期になり,計画に遅れが生じている. 次年度は産休より復帰し,当初の計画通り実験を進める.また,産休中であっても研究代表者が指示を出す形で学生が研究を進める予定である.しかしながら,引き続き学会参加が困難な状況が続くため,旅費・その他費用に余剰が発生する見込みである.これに対して,新たに学生に実験トレーニングを行う際の消耗品など,物品費が追加で必要となることが予想されるため,旅費・その他費用から充当する.
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