研究課題/領域番号 |
18K13809
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
酒井 雄也 東京大学, 生産技術研究所, 講師 (40624531)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | コンクリート / 水 / 気泡 / MRI / 浸潤 |
研究実績の概要 |
初年度は、コンクリートに液状水が浸潤する際に残存する気泡の影響の確認と、MRIによるコンクリート中の水分分布の観察方法を確立を実施した。 一般にコンクリートに水が浸潤する場合、水の浸潤フロントより浅い位置では、空隙が飽和していると考えられている。しかし、例えばナノオーダーの流路を用いた検討では、多くの気泡が残存し、不飽和となることが報告されている。これを確認するために、セメントペーストとモルタルへの浸潤試験を、大気圧下と減圧下で実施した。減圧下で実施した理由は、浸潤過程で気泡が残存した場合に、気体部分の圧力が低ければ縮小、溶解する可能性が高まるためである。大気圧化と減圧下での吸水量の差を気泡の量とした。検討の結果、様々な配合や養生条件で検討したが、いずれの条件でも気泡の残存を示唆する結果が得られた。また気泡の量は最大で、浸潤した水の10%に達した。ただ、今回の減圧では全ての気泡が除去できたわけではないため、実際の気泡の量はこれを上回ると考えられ、残存気泡の影響は、条件によっては無視できないほど大きいといえる。 MRIによるコンクリート中の水分分布の観察はこれまでに実施されてきたが、特殊な装置を使用したり、白色セメントを使用したりといった制約があった。前者は汎用的でないため実施者が限定され、後者は通常のセメントと比較して空隙構造が粗大になり、定量的な議論が困難になるという問題がある。そこで本研究では、一般的なMRIを用いて、普通セメントを用いて作成したコンクリート中の水分分布の観察を試みた。その結果、TEやTRというMRIでのパラメータを非常に短く設定し、また骨材として石灰石を用いることで、明瞭にコンクリート中の水分分布が観察可能であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コンクリート中の液状水移動をモデル化するという目標に対して、これまでに考慮されてこなかった残存気泡の影響を定量的に評価し、高精度なモデル化に貢献する結果が得られた。 また普通セメントを用いたコンクリート中の水分分布を、一般的なMRIを用いて観察する方法を確立した。これにより、コンクリート中の液状水移動のモデル化に向けて、重要なデータを取得する準備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に手順に基づき、様々な配合や養生で作製したコンクリート供試体への液状水浸潤や、その後の乾燥過程をMRIを用いて観察する。そして、コンクリート構造物の設計段階で利用可能なパラメータを用いて、これまで以上に高精度で、コンクリートへの液状水浸潤を評価する方法を検討するとともに、これまでに評価ができなかった乾燥過程を簡易に予測する方法を確立する。提案する方法の妥当性は、実構造物もしくは屋外に暴露された大型供試体を対象とした分析により検証する予定である。
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