本研究ではコンクリートへの液状水浸潤における残存気泡の存在と、浸入した水の乾燥過程の理解を目的として検討を実施した。 まず液状水浸潤における残存気泡に影響を与える要因を理解するため、様々なセメント硬化体を作製して、大気圧下および減圧下で吸水させ、その差から残存気泡量の評価を試みた。検討の結果、液状水の浸潤深さが同等であっても、常に減圧下での浸潤の方が吸水による重量増加が大きく、重量の差は液状水が浸潤した際に飽和されずに残る残存気泡に起因するものと解釈した。AE剤の量と混和材によって残存気泡量は変化し、今回の検討では最大で吸水量の12%に相当する残存気泡が存在すると推定された。ただ、減圧下であっても残存気泡が存在している可能性があり、実際にはさらに多くの残存気泡が存在する可能性がある。 次にMRIを用いて、セメント硬化体からの水分逸散の様子を観察した。3TのMRIを用いたが、これまではコンクリートを観察する場合、白色セメントを用いなければ水分の観察が困難であった。今回、パラメータの最適化を行った結果、普通セメントを用いたコンクリートであっても水分の観察が可能となった。ただし、骨材には石灰石骨材を用いる必要がある。MRIでの観察の結果、これまで考えられていたような、表面から順に乾燥していくという挙動ではなく、表面に水分が残存した場合であっても、不連続に内部から先に水分が失われたりと言った現象が確認された。 水の浸潤に伴う腐食や劣化に関して、上記のような現象を考慮することでより合理的な設計体系の達成が可能になると考えられる。
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