研究課題/領域番号 |
18K13818
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
近広 雄希 信州大学, 学術研究院工学系, 助教 (10778905)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 緊急仮設橋 / シザーズ橋 / 補強最適化 / 耐震性能 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,トラス橋の形を意識したモバイルブリッジの架橋後の補強手法を提案し,それらが動力学特性や耐震性能の変化に及ぼす影響を明らかとすることにある。本研究の遂行によって,被災現場における橋の安全性をより現実的な観点から評価でき,シザーズ型緊急橋の実用化を大きく促すことが期待される。 令和元年度は,(1)補剛効果の実証実験,(2)補剛材剛度と格間数に着目したパラメトリック解析,(3)補剛材を含む地震応答解析を行った。項目(1),(2)では,これまでに試作された歩行者用のシザーズ型緊急橋を対象に補剛材の有無に応じた載荷実験を行い,補強によるひずみやたわみの低減効果を確認した。また実証実験をもとに解析モデルの妥当性を再確認し,支承の拘束条件や補強材の部材剛度,格間数などの設計パラメータに着目したパラメトリック解析を実施し,補強による耐力向上を定量的に確認した。さらに項目(3)では,前年度の補強最適化の結果をもとに,種々の補強パターンを想定した地震応答解析を行い,地震下における安定性を検討した。ここでは,補強材を兼ね備えた床版,ならびに,軽量なケーブル材を組合せた補強レイアウトが最も地震下の変位が小さくなり,主部材は降伏応力未満で座屈は生じなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度は,前年度の補強最適化の結果を踏まえた実証実験を実施した。この実験では,設計荷重を想定した人1人程度の静荷重を与え,補強材として上弦材を設置した。補強材の有無によりシザーズ型緊急橋のたわみが最大50%ほど低減した。また,実証実験を踏まえたパラメトリック解析の実施も行った。実験では,若干の可動が許容できる状態となっていたが,支承部を完全に固定することによって60%以上のたわみ低減効果を期待できることが分かった。 他方,シザーズ型緊急橋の展開角が大きくなるにつれて格間長も増えるため,上弦材のように圧縮力が作用する部材は座屈に注意しなければならない。例えば,板厚10mmの上弦材が設置されたシザーズ型緊急橋の展開角が45度と75度の場合を比較すると,その耐力は2倍以上の差があった。さらに,妥当性のある解析モデルをもとに,骨組モデルによる地震応答解析を行った。ここでは,上弦材や下弦材を組合せた種々の補強状態を想定した。上下弦材を設置することにより,無補強と比べ最大応力が60%程度低減した。さらに静解析と地震応答解析の結果を比較した場合,無補強時に生じた最大応力の動的増幅係数は2倍であったが,上下弦材を設置すると1.3倍まで低下し,補強材設置による安全性の向上を確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は,シザーズ型緊急橋の主部材や補強材の結合部などの応力集中を評価するために,前年度までの骨組モデルから立体モデルでのモデル化を試み,地震下における安全性を評価する。ここでは,格間数や展開角などの設計パラメータに着目し,補強材の有無や設置方法による応力集中の違いや動的増幅係数の変化を定量的に確認する。さらには,ピン部の公差や摩擦など影響も合わせて検討し,シザーズ型緊急橋の耐震安全性に関する基礎知見を収取する。
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