研究課題/領域番号 |
18K13819
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
清水 優 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (30735006)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 鋼床版 / 疲労 / き裂進展速度 / き裂進展経路 / 確率 |
研究実績の概要 |
Uリブ鋼床版の疲労耐久性を評価するためには,き裂の発生寿命のみでなく,き裂の進展速度やその進展経路を把握することも重要となる.特に本研究で対象とするUリブ溶接部からデッキプレートへと進展するき裂は断面がS字のような形状を描く複雑な進展経路をたどる.そのため,載荷状況によってはき裂の進展が停留するなど,き裂の発生から進展までを一概に評価することが難しい. 2019年度の研究では実橋レベルの鋼床版に様々な寸法のき裂を導入したFEM解析を行い,き裂が生じた断面の残存板厚部に生じる板曲げ応力,膜応力,せん断応力を算出し,き裂サイズと各応力成分の関係を定式化した.その後,これらの応力成分を用いて2次元平面でのき裂進展解析を行い,き裂の進展経路および進展速度を評価する指標である応力拡大係数範囲を算出した.き裂が1mm進展するごとに各応力成分を再計算し,外力として与えることで,3次元におけるき裂最深部の応力状態を2次元平面で再現した.解析により得られたき裂の進展経路は,実験により観測されたき裂の進展経路とよく一致した.したがって,き裂進展経路やき裂の進展速度を簡易に推定できる手法を構築することができたといえる. 上述の解析は定点に載荷される場合をもとに行ったが,任意の位置に単位荷重が載荷された場合に着目する溶接部に生じる応力成分の影響線を構築することで,任意の位置に車両が通過した場合のき裂進展の推定へと展開することができる.そのため,現在は応力成分の影響線を構築している段階である. 最終的には車両の重量および通過位置を確率変数として与え,き裂が貫通するまでの繰返し回数を確率的に評価する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度はき裂の進展挙動の推定方法を構築することを目標としており,当初の目標はおおよそ達成できた.一方で,確率変数である車両の重量や通過位置を考慮したき裂進展寿命の評価までには至らなかった.
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今後の研究の推進方策 |
2018年度には対象とするUリブ溶接部周辺の形状や,外力である車両の重量,通過位置を確率変数として,き裂の発生寿命の評価を行った.また,2019年度にはき裂の進展挙動の推定方法の構築を行った.2020年度にはまず車両の重量,通過位置を確率変数としてき裂の進展寿命の評価を行う.その後,き裂の発生寿命,き裂の進展寿命を合わせ,鋼床版構造全体としての疲労寿命を確率的に評価する.具体的には,き裂が進展して路面に貫通するまでの供用年数を算出し,健全性を保つために必要な点検頻度等を検討する.
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