まず,Uリブ溶接部のルートに発生する応力を検討した既往の論文を調査し,ルート部の応力と疲労寿命の関係を整理した.ルートに生じる応力の評価が行われていない論文については再現解析を行った.ルートの応力の算出方法については,各文献で異なっており,ルートに近い1点の応力を参照する方法や,2点から直線外挿する方法,所定のサイズの要素を配置しその要素応力を用いる方法があり,それらの中から疲労寿命を評価するうえで適切な応力を検討した.これらの結果から,溶接ルートの応力範囲とき裂の発生寿命の関係を整理した.また,Uリブ溶接部を対象にした2次元の解析を行い,溶け込みや溶接サイズ等がルートの応力に与える影響を検討した.作用側のばらつきがルートの発生応力に与える影響を検討するため,鋼床版の板厚およびUリブの寸法の組み合わせが異なる実橋サイズの解析モデルを作成し,溶接ルート部に生じる応力の影響線を作成した.橋軸直角方向に載荷位置を変化させ,着目するUリブ溶接部ルート部に発生する応力範囲を求めた.交通量実態調査の結果を基に車種構成を仮定し,軸重の大きさおよびタイヤその通過位置を確率分布で与えた場合のき裂発生年数を検討した.既往の研究でも示されている通り,ダブルタイヤがUリブ溶接部直上を通過するとき,ルートの応力は最大となる.そのため,Uリブ溶接部直上を大型車のダブルタイヤ中心の最頻通過位置とする場合,最も疲労寿命が短く,大型車交通量10万台/日のときに95%以上の確率で10年以内にき裂が発生する結果となった.ダブルタイヤの最頻通過位置がUリブ溶接部から離れるほど疲労き裂の発生確率が小さくなるが,最もき裂発生確率が小さいケースでも約50%の確率で30年以内にき裂が発生するという結果であった.
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