研究課題/領域番号 |
18K13820
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
野口 恭平 京都大学, 工学研究科, 助教 (70802685)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 飛来塩分 / 付着塩分 / 維持管理 / 数値流体解析 / 地上設置物 / 上昇気流 / 対流熱伝達 / 放射 |
研究実績の概要 |
本研究の目的の1つは,地上設置物によって橋梁断面周りの気流を変化させ,橋梁への付着塩分量を低減させることである.昨年度は矩形断面を対象として,矩形断面と地面との距離が矩形断面周りの流れ場に及ぼす影響,地上設置物の位置や形状・大きさが矩形断面周りの流れ場に及ぼす影響について,数値流体解析(CFD)を利用して検討を行った.今年度は3種I桁を有する橋梁断面を対象に地上設置物の影響について検討を行い,矩形断面の場合と同様に地上設置物によって橋梁断面周りの流れ場形状が変化することを明らかにした.一方,粒子挙動に着目すると,矩形断面の場合には付着量を低減できる地上設置物であっても,橋梁断面の場合には付着量を増す可能性のあることが判明した.したがって,流れ場形状を推測するという点で矩形断面についての情報は有用であるが,橋梁断面周りの粒子挙動および付着特性は必ずしも矩形断面とは等しくないことに留意する必要がある. また,矩形断面の断面辺長比を様々に変化させて,塩分粒子の大気中輸送および物体壁面への付着メカニズムを詳細に検討した.特に,側面への付着パターンは大きく分けて2通りあり,次の2つに分類することができることを明らかにした:①上縁から剥離した流れの再付着に伴う付着,②剥離流れが再付着していないときに背面から回り込んでの付着.したがって,断面辺長比によって粒子の付着メカニズムは異なるといえる. さらに,熱で発生する上昇気流に関する初期検討として,日射の効果は無視し,地面の温度と材料特性別ごとに,地面付近の空気の温度変化と上昇気流の程度について検討を行った.その結果,地面・空気間の対流熱伝達と地面からの放射だけでも,大気をある程度暖め,一定の上昇気流が発生することを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,橋梁の腐食環境を改善させるための方策として,「A.橋梁周辺の地面への構造物の設置による,橋梁表面に塩分が付着しにくい風環境の実現」,「B.熱で発生する上昇気流に伴う,桁間の換気による腐食環境の改善」の2つを対象としている.Aについては1年目から継続して実施し,着実に成果を得ている.Bについても2年目から本格的に検討を開始し,基礎的な検討を済ませており,次年度よりさらなる進捗が期待される.以上より,全体としての進捗はおおむね順調であると判断される.
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今後の研究の推進方策 |
「A.橋梁周辺の地面への構造物の設置による,橋梁表面に塩分が付着しにくい風環境の実現」については,これまでの2年間の成果に基づき,さらに検討を進める.具体的には,これまでは地上設置物として矩形の物体を考えてきた.一方,矩形以外にも様々な形状を検討する余地があり,特に柵や金網のような,例えば高架橋の桁下空間の侵入防止に使われる形状を想定し,流れ場形状や塩分粒子の飛散特性に与える影響を検討する.または複数の設置物が複合した場合の影響についても対象としたい. 「B.熱で発生する上昇気流に伴う,桁間の換気による腐食環境の改善」については,自然風がなく,かつ橋梁等がなく地面だけの状態を想定し,日射による影響も加味してCFDによって風速や圧力とともに温度に関する方程式を解くことで,上昇気流の発生の有無と程度を,地面の材料や色等の物性値ごとに明らかにする.その上で,橋梁の存在も考慮した状態で同様の検討を行い,上昇気流によって橋梁断面周りに形成される流れ場の特性や,そこに自然風が作用した場合の流れ場について,さらにはそのような場における塩分粒子の飛散特性について検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスにより一部の出張を取りやめたこと,大学のスーパーコンピュータの資源量を予定していたほど確保できなかったことから,次年度使用額が生じた.新型コロナウイルスの状況次第で予定は変わりうると思われるが,計算環境の改善・充実を中心に利用したいと考えている.
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