研究課題/領域番号 |
18K13822
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
田井 政行 琉球大学, 工学部, 助教 (70646596)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 高力ボルト / 腐食 / 残存軸力 |
研究実績の概要 |
鋼橋の接合部に用いられる摩擦接合継手の高力ボルトは,鋼橋の腐食部位の中でも著しい腐食損傷が生じている場合が多い.腐食損傷が生じた高力ボルトは,導入された軸力の低下が懸念されており,高力ボルト摩擦接合継手の耐荷性能は高力ボルトの軸力に依存するため,腐食減肉した高力ボルト摩擦接合継手の耐荷性能・耐久性能の評価法を確立するためにも,腐食減肉した高力ボルトの残存軸力の評価が重要である. そこで本研究では,腐食減肉が生じた高力ボルト摩擦接合継手の残存耐荷力評価法を目的に,研究に取り組んでいる.本年度は高力ボルトの腐食減肉量に応じた残存軸力評価の信頼性向上を目的に,ひずみゲージ法を用いた実腐食高力ボルトの残存軸力計測と有限要素解析を用いた評価法の検討を行った. 腐食高力ボルトの残存軸力計測に関しては,ボルト頭部高さ及びボルト側面の減肉量を考慮した軸力補正式を提案した.この提案式により腐食高力ボルトの残存軸力を既往手法と比べて安全側に推定できることを明らかにした.残存軸力評価法に関しては,3Dスキャナを用いて実腐食高力ボルトの減肉形状を精度良く計測し,有限要素解析モデルを作成し,検討を行った.これより,ボルト頭部とナット部の全体の側面減肉量平均値を用いる場合と比べて,座金近傍の減肉量を用いる方が残存軸力の推定精度が向上することを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画では実用的で信頼性の高い実腐食高力ボルトの残存軸力評価法を構築することを目的としており,当初の計画通り,新たに43本の実腐食高力ボルトの残存軸力計測並びに3Dスキャナによる形状計測を行い,提案手法の妥当性を検証できた.以上の理由より,本研究は概ね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討により,腐食高力ボルト摩擦接合継手において,高力六角ボルトの残存軸力をある程度推定することが可能となった.今後は,高力ボルトとして用いられるトルシア形高力ボルトの残存軸力推定を試みるとともに,連結板の腐食が摩擦接合継手の耐火量に及ぼす影響について,有限要素解析を用いて検討を行い,耐荷力評価法の構築を試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初検討していた高力六角ボルトに加えて,近年使用頻度が高いトルシア形高力ボルトに対する検討を追加することとなったため,試験片の採取や減肉形状の計測などを追加で行う必要が生じた.これに伴い,学会発表や論文投稿が遅れたため,これらにかかる費用が発生しなかったことが挙げられる. 次年度以降は,現在得られている成果を取りまとめ論文投稿や学会発表への参加費用とすることなどを計画している.
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