研究課題/領域番号 |
18K13828
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高井 敦史 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (30598347)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 熱的性質 / 溶出特性 / 室内試験 / 圧密 / カラム試験 |
研究実績の概要 |
本研究は3つのサブテーマで構成されており、平成30年度はサブテーマ(1)と(2)について検討を行った。 サブテーマ(1)「温度変化に対する地盤材料の物理的・水理学的性質の変化」では、異なる温度条件下で圧縮試験を行い,地盤材料の間隙構造と透水性に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。平成30年度は,複数の工業粘土と浚渫された自然粘土を対象とした段階載荷による圧密試験を行い、温度が高くなるほど圧密係数が大きくなり、17℃と比較すると数倍上昇することから圧密の早期完了が期待できることを明らかにした。また試料のコンシステンシー限界を異なる温度で評価した結果、温度変化により液性限界や塑性限界が変化することを明らかにした。またこれらの結果から得られる試料の活性度と、温度変化に伴う圧密係数の変化率に概ね良い負の相関が見られることが分かった。また試料の蛍光X線分析を行い、化学組成との関係を考察した。 サブテーマ(2)「地盤材料に含まれる汚染物質の溶出に及ぼす温度の影響」では、汚染物質の溶出量に及ぼす温度の影響を,各種溶出試験により評価する。本サブテーマは平成31年度(2019年度)より実施する計画であったが先行して着手し、平成30年度は掘削頁岩を用いたバッチ溶出試験を行い、溶出操作時の振とうの有無に関わらず、40℃でのヒ素の溶出濃度は20℃のものと比べて数倍高くなり、公定法の20℃では土壌環境基準を満足する場合であっても、40℃では基準を超過しうること等を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、(1) 温度変化に対する地盤材料の物理的・水理学的性質の変化、(2) 地盤材料に含まれる汚染物質の溶出に及ぼす温度の影響、(3) 熱―水―化学の連成を考慮した物質輸送のモデル化、の3つのサブテーマで構成される。サブテーマ(1)は、計画どおりに進捗しており、複数の試料を用いた温度効果の一般化に向けて実験的検討を進めている。一方、当初計画では平成31年度(2019年度)から実施予定であったサブテーマ(2)を平成30年度より先行して着手できた。所要の成果を得られており、さらに一部先行して着手できていることから、計画以上に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
サブテーマ(1)「温度変化に対する地盤材料の物理的・水理学的性質の変化」では、要素試験と土槽試験によるスケール効果や、空間的な熱伝達と変形挙動も考慮しつつ、引き続き検討を続ける。粘土試料の鉱物組成や間隙水の水溶性成分等の影響も考慮し、現象の一般化を目指す。 サブテーマ(2)「地盤材料に含まれる汚染物質の溶出に及ぼす温度の影響」については、これまでに使用した地盤材料を対象に、鉛直一次元カラムを用いた通水試験を中心に行う。過去に実施したバッチ溶出試験とは異なり、通水に伴う化学成分の溶出濃度の経時変化を評価できることから、実環境での降雨浸透や地下水流動を模擬でき、実現象の解明に寄与すると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった実験器具の一部が前年度に調達できなかったため、次年度に繰り越した。その他は概ね計画どおり執行しており、全体としての計画に支障はない。
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