研究課題
2019年度は、室内圧密試験、現場加温試験、数値解析、カラム溶出試験を行った。それぞれで得られた成果の概要を以下に記す。1) 圧密試験の結果から、間隙水が海水の場合の最終沈下量はいずれの条件でも蒸留水の場合と比べ増加し、最終沈下量の増加率は最大で20%程度であることが分かった。圧密係数はいずれの条件でも温度上昇に伴い増加傾向を示したものの、その増加率はいずれの条件でも蒸留水のケースと比べ海水の場合の方が小さいことが明らかとなった。2) 屋外加温試験の結果から、太陽熱温水循環器を用いた加温効果は地盤温度に対して夏期では+8.3℃、冬期では+5.0℃であった。このとき粘性のみが変化したとすると、17℃条件と比較して圧密係数Cvが夏期では1.21倍、冬期では1.13倍となった。また、加温効果が得られる条件は土槽温度と流入温度の差が夏期では8.8℃以上、冬期では2.8℃以上であった。また加温効果が得られる限界距離が、夏期における1本条件では900 mm、2本条件では1380 mm、冬期における1本条件では600 mm、2本条件では990 mmであること等を明らかにした。3) 屋外加温試験の結果をCOMSOLを用いた熱伝導解析によって精度よく表現しうることを明らかにした。また、三角配置された鉛直加熱パイプの離散距離を変えた際の加温効果を評価しうる解析手法を確立し、地盤温度と加温時間の関係を表現可能となり、相関は指数関数で表現できることを明らかにした。4) カラム通水試験により、40℃でのヒ素の溶出量は、20℃に比べて液固比5、10のときそれぞれ約2.4倍、1.8倍高くなるが、時間経過とともにその差は小さくなることを示した。また、閉鎖系のバッチ試験においては化学平衡によってヒ素の溶出量は制限されるため、カラム試験よりもヒ素溶出量が小さいことを明らかにした。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究は、(1) 温度変化に対する地盤材料の物理的・水理学的性質の変化、(2) 地盤材料に含まれる汚染物質の溶出に及ぼす温度の影響、(3) 熱―水―化学の連成を考慮した物質輸送のモデル化、の3つのサブテーマで構成される。2019年度は当初計画どおりにバッチ試験とカラム試験を組み合わせた溶出特性評価で所要の成果を得た。また、屋外加温試験を数値解析による評価を導入し、地盤の伝熱特性に踏み込んだ検討ができたことから、計画以上に進展していると判断する。
サブテーマ(2)「地盤材料に含まれる汚染物質の溶出に及ぼす温度の影響」については、異なる地盤材料のカラム通水試験を実施し、溶出特性の温度依存性について一般化を図る。また、シリアルバッチ試験等も組み合わせることで、溶出特性変化のメカニズムについて精査する。サブテーマ(3)「熱―水―化学の連成を考慮した物質輸送のモデル化」については、圧密試験、カラム通水試験、バッチ溶出試験の各結果を統合的に組み込み、透水性と溶出性の変化から溶出フラックスを算出しうる評価ツールの開発を行う。
すべて 2019 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
第13回環境地盤工学シンポジウム発表論文集
巻: - ページ: 23-28
巻: - ページ: 39-44
Geo-Environmental Engineering 2019
巻: - ページ: on USB
http://geotech.gee.kyoto-u.ac.jp/