本研究では研究計画に示したサブテーマに従い、2020年度は以下の検討を行った。 (1) 溶出特性 バッチ溶出試験は、20、30、40℃の試料温度、6~216時間の固液接触時間でヒ素を対象として行った。カラム通水試験は、直径5cm×高さ30cmの円筒型カラムに締固め度約90%で試料を充填し、温度条件は20℃と40℃でISO 21268-3に準拠した上向流で実施した。対象試料には、地質起源で自然由来の重金属等を含有する頁岩試料と泥岩試料を用いた。さらに泥岩試料は逐次抽出試験を適用し、Asが泥岩試料中で存在する形態を評価した。その結果、試験方法によらず、20℃条件に比べ、30、40℃条件ではAs濃度が最大で10倍に増加すること、温度上昇に伴って泥岩中のヒ素のイオン交換態の存在割合が減少し、残渣分は増加すること、カラム通水試験ではアルミニウム(Al)溶出濃度が高くなるとAs溶出濃度が高くなったこと、等を明らかにした。 (2) 力学特性と加温特性 直径10cm×高さ5cmの供試体サイズで、異なる温度条件下での圧密試験を行った。試料には笠岡粘土とカオリン粘土を使用し、供試体温度が17、35、50℃となるよう循環水で制御した水浸容器を用いて実施した。現場加温試験では、太陽熱温水循環器を用いて1.4m四方の土層内に充填したカオリン粘土を加温し、軟弱粘土地盤での加温特性を評価した。また、数値解析を行い現場加温試験の再現を試みた。その結果、間隙水中の塩分濃度が高いと圧密が遅延する可能性があり、その主因は炭酸カルシウムである可能性があること、太陽熱温水循環器を用いた加温によって、外部地盤に比べて10~15℃の温度上昇 がみられること、一定時間経過後は、三角配置した3点の熱源が一体となって加温すること、地表面における風や日射等の影響を境界条件に考慮することで解析精度が改善すること、等を明らかにした。
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