研究課題/領域番号 |
18K13832
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
研究代表者 |
宮本 慎太郎 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), システム工学群, 助教 (60782711)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 展開式セル補強材 / 一面せん断試験 / 可視化 / PIV解析 |
研究実績の概要 |
地震などで道路網が遮断された際,速やかに車両の通行を可能にする道路啓開のための地盤技術が求められている.本研究では,道路啓開および応急復旧に適用可能なステレオ補強材を新たに開発し,迅速に道路を復旧可能な地盤補強技術の確立を目指している.その中で,今年度は,宇宙構造工学分野における自己展開構造をヒントにしたステレオ補強材の試作と,土―セル補強土系の変形強度特性を把握するための材料試験を重点的に行った. 一枚のシートを立体展開してセル構造体を構築する展開式セル補強材を提案した.提案したセル補強材は,従来の補強材において構造的弱点になりやすい熱融着部が無く,セルの展開角度を変化させることで,現場条件に合わせて配置できるものである.セル補強材の展開条件と補強材の三次元形状の幾何学的関係を解析した結果,展開角度が大きいときほど,少ない部材で広い面積の補強を可能にする可能性があるが,土の充填性が悪くなる.展開角度によって変化する補強土効果を考慮する必要があることを明らかにした. 土-セル補強土系のせん断強度を一面せん断試験で調べた.土―セル補強土系のせん断強度は,展開角度が小さいときほど,土のダイレイタンシーを拘束することで,高いせん断抵抗が得られることを明らかにした.さらに,上下せん断箱の境界および土が充填されたセル同士の境界で,せん断ひずみが生じ,セルで拘束された領域では,せん断ひずみが生じないことをPIV解析より明らかにした.土-セル補強土系のピーク時のせん断抵抗を,土の残留時のせん断抵抗角,ダイレイタンシー角,セル補強領域の全体に対する割合,ダイレイタンシーがせん断抵抗に寄与する程度を表す係数で表現する評価式を提案した.提案式は,セルの立体展開条件によって変化する土―セル補強土系のせん断抵抗特性をある程度の精度で再現できることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
予定していた実験はおおかた終了しており,追加実験が必要な際にもすぐに実験可能な状態になっている.また,補強効果の評価法や移動載荷下の地盤変形予測モデルもすでに開発済みである.そのため,当初の計画以上に進展しているという区分を選択した.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,以下の4項目に関する研究内容が申請されている. ①宇宙構造工学分野における自己展開構造をヒントにしたステレオ補強材の試作 ②土,補強材,土-補強材の変形強度特性を把握するための材料試験 ③定点・移動載荷模型実験による補強効果の把握 ④移動荷重下での地盤変形予測モデルと被災レベルを考慮した性能評価法の開発 昨年度は③,④に関する検討を行っており,模型実験の結果から地盤変形予測モデルを開発した.本年度は①,②に関する検討を重点的に行い,ステレオ補強材の高機能化と補強効果の評価法を提案した.来年度は,これまでの成果を元に,④の被災レベルを考慮した性能評価法の開発を重点的に行う予定である.④については,室内実験のみでなく実大走行実験の結果がすでに提供されており,それらの結果を用いて性能評価法を開発していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
現場調査に関する費用を計上していたが,科研費で支払う必要がなくなった.そのため,前年度は少し使用計画と使用額の差が生じた.今後は,その額分を室内試験の材料や計測器の購入に充てることを計画している.研究経費の使用については,おおむね計画的に使用できており,残額を使用することでより研究を進展させられるものと考えている.
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