研究課題/領域番号 |
18K13836
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中村 晋一郎 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (30579909)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 堤防 / 発達プロセス / 空間データベース / 社会水文 / 水害リスク |
研究実績の概要 |
本研究課題は,水害リスクの適切な将来予測に資するために,人間社会-水文システムの相互作用に着目した堤防の発達プロセスを解明しモデルを構築することで,将来の堤防発達プロセスを予測するものである.人間社会が自然システムへと多大な影響を与えるようになった近現代において,人間社会と自然システムの相互作用を適切に捉えることが極めて重要となってきており,特に急激な社会変化が見込まれる地域において将来の水害リスクを適切に評価するためには,堤防の発達プロセスを解明・モデル化し水文モデルに登載することが不可欠である.本研究では,A. 堤防空間データを含むデータベースを作成し堤防発達プロセスを解明・モデル構築・検証を行い,本モデルを将来の土地利用に適用することでB. 堤防発達プロセスの将来予測の可能性を検討する. 令和元年度は,「A. 堤防の発達プロセスを明らかにしモデルを構築」のうち,モデルの構築と「B. 堤防発達プロセスの将来予測の可能性を検討」の一部を実施した.空間データベースをもとに各年代の堤防の新設箇所(各時代の差分)とその背後地の土地利用割合,人口分布,氾濫域に関する情報を含んだ集計テーブルをGIS上で作成し,この集計テーブルに対して回帰分析を行うことで堤防新設と氾濫原開発の間の関係性を明らかにした.また,全国での堤防延長の推移とその他の社会経済指標との回帰分析を実施することで,堤防延長と社会経済指標との関係を明らかにした.この結果をもとに,500mメッシュ別将来推計人口により,流域内の上下流ごとの氾濫原内の人口分布を全国で推計した.これらの結果を国内学会誌や学会で発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
令和元年度は,「A. 堤防の発達プロセスを明らかにしモデルを構築」及び「B. 堤防発達プロセスの将来予測の可能性を検討」の「B-1:将来シナリオにもとづいた将来土地利用データ」を実施した. 前年度の作成した空間データベースをもとに各年代の堤防の新設箇所(各時代の差分)とその背後地の土地利用割合,人口分布,氾濫域に関する情報を含んだ集計テーブルをGIS上で作成し,この集計テーブルに対して回帰分析を行うことで堤防新設と背後地の土地利用の間の関係性について分析した.その結果,堤防新設と背後地の土地利用の間の相関は,地域によって偏りがあり,特に駅や市街地に近い地域では市街化の影響の方が大きく堤防新設による土地開発促進の影響は小さいことが分かった. 次に全国での傾向を確認する必要があることから,全国の堤防延長の推移と流域内の社会経済指標の推移との間での回帰分析を実施し,堤防延長を被説明変数,人口,世帯数,資産等を説明変数とする回帰モデルを構築した.計画当初は将来シナリオにもとづいた将来土地利用データを作成する予定であったが,流域内の堤防延長と人口との間の相関が確認されたことから,500mメッシュ別将来推計人口(H29国政局推計)を使用することとし,現在と将来の流域ごとの氾濫原内の人口分布を推計した.この結果から,流域によっては将来の上下流での人口バランスが大きく変化する流域があることが明らかとなり,これをもとに流域の分類を行った.この結果を国内学会誌や学会で発表した.以上に合わせて,前年度に作成した堤防データベースを使用した応用研究も進展しており,当初計画以上の成果を得ている.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は「B. 堤防発達プロセスの将来予測の可能性を検討」のうち,「B-2:将来土地利用に対する堤防発達モデルの適用」を実施する.今年度作成した流域内の氾濫原における将来人口分布に対して,構築した堤防発達モデルを適用することで将来の堤防発達プロセスを推計し,その予測可能性を考察する.
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