研究課題/領域番号 |
18K13837
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 智大 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (20793798)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 同時被災リスク / リスクカーブ / コピュラ関数 / 内外水氾濫 |
研究実績の概要 |
水害リスクの経済的な分散策の実現可能性を検討するため,多地域同時被災リスク評価を目的と,まず,都市域の氾濫現象をより詳細に表現するための内外水氾濫一体型モデルを開発した.外水氾濫モデルは,多数回の氾濫計算を容易に実現する既開発の高速な流出・氾濫一体型モデルを用いて,このモデルに内水氾濫機構を組み込むことで実現した.内水機構を組み込んだモデルを庄内川流域内の名古屋市に適用し,2000年東海豪雨による床上・床下浸水棟数および全事業種の浸水影響従業員数の再現計算を実施した.計算された被害棟数および人数が水害調査報告とおおむね整合することを確認した. 次に,開発した内外水氾濫一体型モデルを用いて,名古屋市の水害リスクカーブを作成した.水害リスクカーブ作成では,当初計画であった豪雨発生確率モデルによる方法と併せて,最新の大規模アンサンブル気候予測データ d4PDF の利用可能性を分析した.その結果,名古屋市を含む庄内川流域では,d4PDFの極値雨量にバイアスが小さいことがわかり,リスクカーブ作成において d4PDF から得られる年最大流域平均雨量データを使用できることがわかった.そこで,d4PDF 年最大流域平均雨量を開発した内外水氾濫一体型モデルに入力することで水害リスクカーブを作成した.同様に,大阪市を含む淀川流域でも d4PDF の極値雨量の再現性が高かった.淀川流域では,d4PDFの多数のアンサンブルメンバそれぞれを当初計画の豪雨発生確率モデルと組み合わせることで,水害リスクカーブのアンサンブル推定を実現することができた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に計画していた内外水氾濫一体型モデルの開発を完了した.さらに,開発したモデルが過去の大規模水害による被害状況を再現したことから,妥当なモデルが開発できたと思われるため.
|
今後の研究の推進方策 |
初年度の研究成果により,物理モデルである大規模アンサンブル気候予測データベースd4PDF の気候モデルバイアスが対象とする流域において小さいことが確認された.したがって,気候予測モデルによるアンサンブル極値雨量と同時豪雨発生モデルを併用して信頼性の高い同時被災リスク評価を実現することができると考えられる.そこで,今後は,まず d4PDF による極値雨量データを既開発の降雨流出モデルおよび内外水氾濫一体型モデルに入力し,同時豪雨による浸水リスクを評価する.浸水深から被害金額を推定する際には,当該年度の購入した過去の資産データを利用する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該研究課題は3か年の研究課題であり,残りの2か年で多数回の計算を実施する大型計算機の購入および計算機使用料の支払い,研究成果の学会発表の渡航費等が必要となるため.
|