下水道越流水が流入する都市河川では,降雨後に大量の浮遊汚泥(スカム)が河面を埋め尽くすことが報告されている.スカムは魚類の大量へい死を引き起こし,水域生態系を劣化させるとともに,生活環境を悪化させることから早急な解決が強く望まれている.本研究では,大阪府寝屋川水系~大阪市内河川を対象として,感潮河川網で発生するスカムの動態を明らかにし,具体的な解決策を提案することを目標とした.2018年度に引き続き調査・解析を進め,最終年度である2019年度には以下の研究成果を得た. (1)定点カメラを用いた河面観測ネットワークの構築: 複数の河面観測カメラおよびメモリー式流況・水質計を河道に設置し,スカムの挙動に関する観測データを収集した.2019年度からは大阪府と連携調査を開始し,調査規模を拡大するとともに,河川・下水・事業場等の関連データの収集・分析も行った.また,底質調査により有機泥の河道堆積分布等を明らかにし,効果的な浚渫方法について検討を行った. (2)観測データを用いたスカムの挙動解析: 河面カメラ画像からスカム量を連続・定量的に評価するAIを開発し,スカムの挙動特性と浮遊・発生箇所を明らかにするとともに,気象・潮位・水質・底質等との関係を明らかにした. (3)スカム動態予測シミュレーション: 対象水域に三次元流動モデルを適用し,粒子追跡モジュールをベースにスカム動態予測モデルを開発した.開発モデルを用いた数値シミュレーションにより,スカムが発生・集積しやすい地点を推定した. 本研究で得られた知見は,実際の行政施策にも活用されるよう,河川管理者(大阪府)にも随時提供している.実際に,府のスカム対策部会が新たに立ち上げられるなど,スカム問題の解決に向けた取り組みが活発化しており,本研究の成果も活用して具体的な対策が講じられている.
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