研究課題/領域番号 |
18K13841
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研究機関 | 国立研究開発法人防災科学技術研究所 |
研究代表者 |
加藤 亮平 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 水・土砂防災研究部門, 特別研究員 (70811868)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 局地的大雨 / 数値予測 / データ同化 / 雲レーダー |
研究実績の概要 |
「ゲリラ豪雨」とも呼ばれる局地的大雨は、河川の急な増水や道路の浸水などを通じて時には人的被害をも引き起こすため、その予測手法の開発は重要な研究課題である。局地的大雨の一時間以内の短時間予測技術の一つとして、高解像度気象数値モデルを用いた数値予測が挙げられる。数値予測による局地的大雨予測の鍵は、観測に近い適切な初期値を作成することであり、これはデータ同化という技術によって行われる。本研究では、局地的大雨を引き起こす積乱雲の発生段階の雲を観測することできる雲レーダーの同化技術を開発することで、局地的大雨に対して短時間の数値予測の精度向上を目指している。
本年度は局地的大雨予測に対する雲レーダー同化による雲領域加湿(定性的同化)のインパクトを調査した。具体的にはナッジングと呼ばれる同化手法により、雲レーダーで観測されたレーダー反射強度が指定した閾値を超える(雲が存在する)領域に対して相対湿度が100%に近づくように加湿を行いモデルの初期値を修正した。このようなデータ同化を行うために、雲解像数値モデル(CReSS)の同化プログラムを高度化し、雲レーダー同化プログラムを開発した。2018年8月に3台の雲レーダーのセクタースキャンによる特別観測を行い、局地的大雨を引き起こした積乱雲の発生段階の3次元構造を1分毎という高時間分解能で捉えることに成功した。このデータを用い、積乱雲の発生段階に対してナッジングにより同化(加湿)を行い、ナッジング後の1時間先まで予測を行った。雲レーダー同化を行わなかった場合、降水が予測されなかったのに対し、雲レーダー同化を行った場合は強雨が予測された。この結果から、雲レーダーによる雲領域加湿(定性的同化)だけでも局地的大雨の予測精度が向上しうることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度予定していた雲レーダーによる定性的同化(雲領域加湿)のインパクト調査のためのプログラム開発を行うことができ、雲レーダーによる定性的同化だけでも局地的大雨の予測精度を向上しうることを確認できたため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度行った雲レーダーによる定量的同化(雲領域加湿)の結果を国際学会等で発表するとともに、論文化を行う。さらに、雲レーダーの反射強度から雲水量を定量的に推定し、雲水量やそれから推定される熱量を定量的に同化する手法の開発に着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は雲レーダー同化プログラム作成に注力し、国際学会での発表を1件見送ったため海外出張旅費を次年度に持ち越した。次年度は国際学会等で積極的に成果を発表するため、その旅費として使用する予定である。
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