「ゲリラ豪雨」とも呼ばれる局地的大雨は、河川の急な増水や道路の浸水などを通じて時には人的被害をも引き起こすため、その予測手法の開発は重要な研究課題である。局地的大雨の一時間以内の短時間予測技術の一つとして、高解像度気象数値モデルを用いた数値予測が挙げられる。数値予測による局地的大雨予測の鍵は、観測に近い適切な初期値を作成することであり、これはデータ同化という技術によって行われる。本研究では、局地的大雨を引き起こす積乱雲の発生段階の雲を観測することできる雲レーダーの同化技術を開発することで、局地的大雨に対して短時間の数値予測の精度向上を目指している。
本年度は、主に①同化に利用する観測データの長さと同化タイミングの感度実験、及び②雲水や温位偏差の同化実験を行った。①では、雲レーダーで捉えた雲を水蒸気ナッジングにより同化する際、観測データの長さと同化タイミングを1分毎に様々に変化させた実験を行った。その結果、同化する観測データがわずか2~3分程度でも局地的大雨を予測しうることが示された。一方で、同化するタイミングがわずか1分異なることで積乱雲の急激な発達に伴い予測結果が大きく変わりうること、衰弱期の雲を同化することにより偽の雨が予測されてしまうこと、雲が発達し雲と雨が共存する場合には観測よりも強い雨が予測されてしまうという課題も明らかとなった。②では、雲レーダー同化において水蒸気に加え雲水や温位偏差も同化したところ、水蒸気のみを同化した場合に顕在化した予測される雨の開始が遅れてしまう問題が軽減されることがわかった。上記の結果を含むこれまで得られた成果を論文にまとめ、国際誌へ投稿した。
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