本研究において、高解像度な雨量データおよび人工知能を用いて、これまで予測が困難とされてきた都市中小河川を対象に、迅速かつ高精度な河川水位予測を実現した。研究1年目おいて、鶴見川の都市中小河川流域において深層学習を用いた水位予測モデルの構築・検証を行った。2年目においては、国内自治体の3河川において実況雨量(XRAIN)などを用いた場合の60分先までの予測精度検証を行った。雨量レーダによる空間的に解像度の高い雨量データを活用するため、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて二次元的な雨量分布を読み込む洪水予測モデルを構築し、複数のダム流域において検証した。また深層学習以外の複数の機械学習を水位予測に適用し、深層学習との比較を行った。 研究期間の後半においては、機械学習による予測手法全般で課題となっている外挿範囲での予測性能の向上に取り組んだ。学習範囲を超えるような仮想洪水によるデータ拡張手法を提案し、複数流域でのケーススタディにより有効性を実証するとともに、様々な条件下での適用性の違いを検証した。また、CNNを用いた洪水予測モデルについて、入力データの感度分析やXAI技術(SHAP、Grad-CAM)を適用することで、流出予測における入力雨量の時空間的な寄与度を可視化し、水文的な解釈から深層学習モデルの挙動の妥当性を検証した。最終年度においては、深層学習を用いた流出解析における国内外の論文レビューを行い、総括論文として発表した。 また本研究のメインテーマである水位予測から発展させる形で、人工知能を用いて外水氾濫の浸水域を予測する技術に関する基礎検討を行った。深層学習を用いて、観測浸水深もしくは越流地点での水位予測を入力データにして、氾濫域を予測するモデルを構築した。これらの技術は、将来的に河川水位予測との連携により水害リスク予測を行うことができる。
|