研究課題
本研究の目的は,効果的な中心市街地活性化方策を提案するために,中心市街地における(A)空き店舗の発生要因と(B)賑わい構成要素を分析すること,特に(C)店舗間の相互作用と賑わいとの関連性を明らかにすること,さらに,(A)-(C)の成果を踏まえて(D)空き店舗活用シミュレーションを行うことである.2018年度は,鳥取市中心市街地を対象として(A)および(B)の分析を実施した.その際,2019年度以降に実施する(C)の分析においても利用することを前提に,必要なデータの一部を実地調査によって収集した.(A)について,街路ネットワーク構造等の都市空間構造に着目した分析の結果,分析対象地域においては,(A1)次数中心性が高く,街路ネットワーク構造上利便性の高い場所で空き店舗が多く発生していること,(A2)学生等,徒歩や自転車による利用が比較的多い施設(高等学校や図書館等)からの距離が近い場所では,空き店舗が少ない状態であること,(A3)大規模駐車場を備えており,自動車による利用が中心である施設(博物館,総合病院,市役所等)から近い場所では,空き店舗が多く発生していることが示された.また,(B)について,賑わいの代理指標として路線価を用いた分析を行った結果,(B1)鉄道駅や総合病院との距離が近い場所で路線価が高いこと,(B2)媒介中心性が高い場所等,街路ネットワーク構造上利便性の高い場所で路線価が高いことが示された.なお,本年度の成果は,土木計画学研究発表会等の国内学会における研究発表3件および査読付学術論文1件として発表した.さらに,居住区の街路ネットワーク構造に着目した研究成果を査読無論文として発表した.また,国内学会において交通整備効果の因果推論に関する招待講演1件を行うとともに,交通整備等が都市空間構造に及ぼす影響を理論的に分析した論文を執筆し,共著図書として刊行した.
2: おおむね順調に進展している
2018年度には,(A),(B)の実証分析を順調に遂行し,研究成果の発表に至った.また,その過程において(C)の分析での利用を予定しているデータの一部の収集と整理も実施した.以上から,当初の計画通り順調に進捗している.
2019年度には,(A),(B)について他の複数の地方都市の中心市街地を対象とした分析を行い,推定結果の比較・考察を行う予定である.また,既にデータの蓄積が進んでいる鳥取市中心市街地を対象として(C)の分析を推進する.
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)
都市計画論文集
巻: 53-3 ページ: 319-325
https://doi.org/10.11361/journalcpij.53.319
都市計画報告集
巻: 17 ページ: 355-359