研究課題/領域番号 |
18K13850
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
大平 悠季 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 助教 (60777994)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 土木計画 / 街路ネットワーク構造 / 施設立地 / 営業時間 / 商業集積 |
研究実績の概要 |
本研究課題は,衰退傾向の顕著な地方都市の中心市街地において効果的な活性化方策を検討するために,中心市街地における空き店舗の発生要因および賑わいの形成要因を分析すること,特に店舗間の相互作用と賑わいとの関連性を明らかにした上で,空き店舗の活用方法に関する政策的示唆を導出することを目的としている. 2020年度はこれまでの成果を踏まえ,店舗間の相互作用を定量化するために店舗の立地分布に関するデータ収集・分析を進めた.研究対象地は,前年度までに蓄積したデータを活用できることと,中心市街地の高齢化や空洞化といった多くの地方都市に共通の課題を抱えていることから鳥取市とした.具体的には,研究対象地域には昼間のみ営業している事業所・施設や夜間のみ営業する飲食店等が混在しており,昼間と夜間で営業している店舗等の分布傾向が異なると考え,対象地域内のすべての店舗・事業所・施設約700件の営業時間帯を調査し,昼間と夜間の各時間帯に営業している店舗および空き店舗の分布を把握した. 近年,繁華街の夜間営業の施設(ナイトライフ資源)の空間分布に着目した研究が地理学分野で蓄積されつつあるが,これらは大都市を対象にビッグデータを用いた分析が中心である.また土木計画・都市計画分野において昼間や夜間といった時間帯別の商業集積と賑わいの関係に着目した研究は非常に限られる中,実地調査等によって地方都市中心市街地の実態を把握した本調査は独自の成果といえる. 調査の結果,中心市街地の中でも歩道やアーケードの整備されている街道沿いや駅前の商店街では昼間に営業している店舗の密度が高いこと,これらのエリアと夜間に営業している店舗の密度が高い地区が異なっていること,また昼間・夜間を問わず店舗密度の高いエリアで空き店舗も目立つ状況であることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度には,当初計画していた実地調査を含むデータ収集を行い,本研究課題の独自の着眼点である「時間帯別の商業集積の定量化」を進めることができた.ただし,新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって調査・データ整理の実施時期が大幅に遅れた.このため,当初の計画ではこの調査結果を踏まえて時間帯別の商業集積と賑わいの関係の分析を実施する予定であったが,基礎的な分析のみに留まっている.また,当初の予定では最終年度であった2020年度に初年度からの分析結果及び政策的示唆の整理と総括を実施する予定であったが,その段階には至らなかった. 以上のように,最も多くの時間を割くことが想定されていたデータ収集は完了したものの,全体としては「(3)やや遅れている」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度には,2020年度に実施できなかった時間帯別の商業集積と賑わいの関係についての分析を推進するとともに,これまでに実施した研究成果を総括し,空き店舗を活用する上での政策的知見および中心市街地の空間構造を実証的に研究する際の注意事項等を整理する.
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はCOVID-19感染症拡大の影響により,分析手法等に関する最新情報収集のための研究会を延期し,学外打合せはオンライン形式で実施した.また,同様の目的で参加した学会はすべてオンライン形式による開催となった.さらに,学会の一部は参加費を無料とする措置が取られた.これらの理由から,旅費や学会参加費として使用予定であった助成金を次年度に繰り越すこととなった. 2021年度は,同感染症の影響が当面継続すると見込まれることを踏まえ,助成金を解析用の新たな計算機ならびにオンライン形式の学会等への円滑な参加のためのPC周辺機器の購入に使用し,効率的な研究の推進を図る.
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