研究課題
平成30年度は以下の内容を実施した.1. 大量文書データを用いた社会的関心の変遷に関する分析防災分野に関する新聞記事データから人々の関心の推移を明らかにする方法を開発した.社会的な関心を表すデータとして新聞記事を用い,20年分の新聞記事テキストに対し深層学習を適用することで,新聞記事において,分析者が指定したキーワードと共に出現し易い(共起する)単語を年毎に算出した(類似度の算出).次に,その類似度から共起する単語のグループを算出し,各グループの変遷の特徴と,各グループを構成する単語を明らかにした.例えば,「避難」と一緒に出現し易い単語が年毎にどのように変化したのかを見た.最後に,特徴的な単語から関心の内容を考察し,その関心がどのように推移したのかを明らかにした.2. 討議の特性が住民の防災意識に与える効果の分析沖縄県国頭村における防災ワークショップ(以下WS)を事例とし,住民の防災意識とWSの特性の関係を明らかにする方法論の開発を試みた.まず,住民の防災意識については,アンケート調査における自助と共助に関する質問への回答結果から,WSの参加者と不参加者の防災意識を算出した.次に,WSの特性については,複数の集落におけるWSの議事録に対しテキストマイニングを行い,各集落の特徴的な話題とその話題が出現する順番を明らかにした.さいごに,集落ごとの住民の防災意識とWSの特性を比較し,防災意識の高い集落におけるWSの特性を明らかにした.つまり,防災意識が高い集落では,どんな話題がどんな順番で出現し易いのかを定量的に明らかにした.
2: おおむね順調に進展している
平成30年度は,(1)防災に関する社会的関心の解明と(2)話し合いの構造が個人の行動意図に与える影響の分析を試みた.(1)は防災に関するキーワードと関連するサブキーワードの抽出とその変化を明らかにすることを目的としており,(2)は話し合いと防災行動意図の関係を明らかにすることを目的としている.(2)では話し合いの質と防災行動意図の関係を明らかにすることを試み,防災WSの内容(質)を評価する際に,どんなキーワードが出現することが望ましいかを(1)より明らかにすることを試みた.(1),(2)ともに結果を得られたことから上記のように判断した.
平成31年度は,防災WSにおける効果的なファシリテーション手法を解明することを目的とした研究を行う.防災WSにおけるファシリテーターは,話し合いを円滑に進めるのみではなく,参加者の防災行動意図を高めるような話し合いを運用することが大切である.しかし,効果的なファシリテーションの手順やルールは明らかではない.そこで,前年度の研究で明らかになった,防災WSの量的な側面(平等に話ができていたか等)と質的な側面(どんな内容を話していたか)から,ファシリテーションのタイミングや内容が防災行動意図に与える影響を明らかにする.
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Proceedings of the 2018 IEEE International Conference on Systems, Man and Cybernetics
巻: - ページ: 462- 467
10.1109/SMC.2018.00088