空間移動時におけるFDI(Filled-Duration Illusion)として,まちなか回遊時における空間体験に対象に(1)FDIを発現させる視覚刺激強度を定量化するとともに,(2)当該刺激強度が歩行者のFDIに与える影響を明らかにした.さらに,道路走行中のドライバーを対象に(3)FDIを発現させる視覚刺激が運転中のドライバーに覚醒を生じさせる効果を有することを明らかにした. (1)については,店舗ファサードに関する情報の時間的変化に着目し,当該情報の時間微分を視覚刺激強度と定義し,視覚刺激強度を定量化した. (2)については,視覚刺激強度がFDIに影響を与えるとの仮説を措定し,同仮説を室内実験により検証した.具体的には,まちなか回遊時における街並みの認知を店舗ファサードの系列的な認知と抽象化した上で,店舗ファサードの視覚刺激強度が経過時間判断に与える影響をラグ数判断課題に基づく時間評定課題により検証した.その結果,視覚刺激強度が高い街並動画は,実験参加者に強い記憶痕跡の形成を促し,その結果主観的経過時間判断が伸長することを明らかにした. (3)については,視覚刺激が長時間走行中のドライバーの運転認知能力の低下を軽減するとの仮説を措定し,室内実験を実施した.その結果,視覚刺激の提示によりヴィジランスの低下が軽減されることを明らかにし,これはFDIによりドライバーが覚醒したためであることを示した.
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