街なかにおける迷惑行為への対策を進めることは、快適な都市づくりの上でも防犯上も重要なことである。その一方で、迷惑行為、とりわけマナー違反とされるような法令に反しない行為に関しては、取締りの対象とはならない行為であるためその発生位置情報が蓄積されないことに加え、一過性の事象である行為も多くその記録が困難であることなどの特徴がある。 そこで、2018年度では、迷惑行為の発生特性を理解するために「注意書き」に着目した。福岡市中央区の天神・大名地区を対象として、まず商業地における掲示の実態を明らかにするとともに、注意書きによる迷惑行為の代替可能性について検討した。注意書きは、自転車利用者向けの「駐輪禁止・自転車放置禁止」が最も多くみられ、その他の注意書きとしてはドライバーに向けての「駐車禁止・駐停車禁止」や、「禁煙」「歩きタバコ禁止」といった喫煙者に向けての注意書きが多くみられた。中でも本研究では喫煙者に対する注意書きに着目し、喫煙に関わる迷惑行為の発生地点情報としての代替可能性を検討した。その結果、若年層の路上喫煙行為の発生位置情報は民間による注意書きによって代替できることを明らかにしたとともに、路上喫煙行為が発生しやすい空間の特性についても明らかにしている。 2019年度では、住宅地へと議論を展開し、近年トラブルになりつつある「道遊び」に着目してその実態を明らかにした。地域において道遊びが容認され、または容認されない道路空間や状況の特徴を明らかにするために、地域住民の道遊びに対する意識について分析した。その結果、例えば道遊びを肯定的に考えている地域住民では時間帯によって容認意識が変化し、特に平日は小学生が下校するような時間帯から午後6時まで、休日は日中であれば容認されることなどを明らかにしている。
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