ばっ気風量の変更により処理水質(BOD)が改善した浄化槽において処理水質の改善前と改善後に,処理工程に従って水,汚泥,生物膜のサンプルを採取し,細菌群集の変化とそれらが処理水質へ与える影響を次世代シーケンス解析を用いて分析した.その結果,浄化槽の嫌気処理段階では嫌気性の細菌が優占種となっており,好気処理においては好気性もしくは通性嫌気性細菌が優占種となっており,嫌気処理と好気処理の間で細菌群集構造が大きく変化していた.Unifracを用いた主座標分析(PCoA)で各処理工程における細菌群集を比較したところ,処理水質改善前(処理水のBODが高く細菌量が多い)では好気処理で増殖した細菌が処理水に多く存在していることが示された.また,好気槽の生物膜,好気汚泥,処理水の微生物群集の関係から,処理水質の改善後(処理水のBODが低く細菌量が少ない)では,生物膜と好気汚泥の細菌群集は類似しているものの,処理水中の細菌群集はそれに類似しておらず,生物膜で増殖した微生物はその多くが沈殿により取り除かれ放流水中の細菌の流出が減少していると考えられた. 初年度に実施した5種類のDNA抽出キットから、浄化槽処理水中の細菌のDNAを最も高い抽出効率で抽出することができるDNA抽出キットを選定について,5種の異なるDNA抽出キットで抽出したDNAを次世代シーケンス解析における検出結果の比較を行ったところ,細菌量の多いサンプルではKit間に大きな違いは見られなかった.細菌量の少ないサンプルにおいてはRead数およびOTU数において差が見られたものの,多様性指数(Shanonindexなど)については差は少なかった.これらのことから,定量解析おいてはキットの種類が影響するものの,微生物群集構造は反映されると考える.
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