今年度は,前年度の「今後の研究の推進方策」で述べたとおり,加速勾配法を用いて全ポテンシャルエネルギー最小化問題を解く方法(前年度までの研究成果による間接法)と,剛性方程式を直接解く方法(直接法)との収束性能を比較するため,いくつかの数値実験を実施した。直接法としては,連立1次方程式の解法として汎用構造解析ソフトウェアでも広く用いられているスカイライン法を比較対象と定め,Pythonにより構造解析プログラムを1から実装した。 規模(節点数・要素数)の異なる様々な解析モデルに対して,前年度比較実験を行った間接法に加えてスカイライン法により釣り合い変位を求める数値実験を行った結果,やはり,小規模~中規模の問題に対してはスカイライン法のほうが早期に釣り合い変位を求めることができた一方で,解析モデル全体の節点変位の自由度が増大すると,その計算効率は逆転し,間接法のほうが早期に釣り合い変位を求めることができることが確かめられ,かつ,間接法の中でも,特に「gershgorinの定理を用いて全体剛性行列の最大固有値の上界を求め,その逆数を固定ステップ幅とし,適応再スタート付き加速勾配法で全ポテンシャルエネルギー最小化問題を解いた場合」が,大規模問題に対しては最も適していることが数値的に確かめられた。 すべてのアルゴリズムはピュアなPythonコードで記述し,外部ライブラリを用いていないため,本研究の結果には一定の普遍性があると考えられる。 研究成果は,2020年12月に開催されたCOMPSAFEで発表したほか,指導学生の卒業論文としても纏められ,日本建築学会九州支部研究発表会でも梗概とともに公開されている。
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