研究課題/領域番号 |
18K13866
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
杉野 未奈 京都大学, 工学研究科, 准教授 (80758368)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 伝統木造建物 / 静的水平加力実験 / 耐震補強 / 柱・梁接合部 |
研究実績の概要 |
本研究では、京都に現存する京町家と呼ばれる伝統木造住宅を地震時の倒壊から守るため、ロバスト性に優れた柱・梁接合部の耐震補強法の開発を目的とする。ロバスト性に優れた柱・梁接合部とは、住宅内の土壁などの耐力要素の配置に関わらず微小変形から大変形まで機能する接合部のことで、その条件は回転方向・軸方向について高い変形性能と適度な剛性を持つことである。 本年度は、柱-梁接合部について変形性能などの大変形に至るまでの耐震性能を把握するために、柱-梁接合部が異なる2種類の2層軸組架構に対して破壊に至るまでの静的水平加力実験を実施した。柱-梁接合部は、長ほぞで込栓・鼻栓と試験体によって種類を変えている。静的水平加力には、昨年度開発した2層軸組架構の頂部・中間層に対して同時に水平荷重を加えることにより変位分布を制御できる加力システムを用いた。架構の変形分布を変えることで、柱-梁接合部に加わる回転方向・軸方向の力を変化させた場合における柱-梁接合部の耐震性能を把握することができる。本実験により、架構の変形分布や込栓・鼻栓の違いが接合部の復元力特性や破壊モードにどのような影響を及ぼすかを実験的に明らかにした。そして、実験結果を追跡可能な解析モデルを構築し、シミュレーション解析を実施した。 更に、栓やほぞの樹種、ほぞの長さといったより詳細な接合部仕様が変化した場合の耐震性能を把握することを目的として、柱-梁接合部の引抜試験を実施できる載荷システムの開発を進めた。本装置は、次年度に実施する接合部補強法の提案に向けての検討にも活用する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、異なる接合部仕様を有する2層軸組架構の静的水平加力実験およびシミュレーション解析を実施することができた。更に、接合部補強の検討にも活用できる柱-梁接合部の引抜試験のための載荷システムの開発を行うことができた。以上より、研究は概ね順調に進展していると言うことができる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度に開発した載荷システムを用いた柱-梁接合部の引抜試験を実施し、様々な接合部仕様が接合部の復元力特性・破壊モードに与える影響を分析する。更に、接合部補強を施した柱-梁接合部の引抜試験を実施し、耐震補強部材の性能を確認するとともに、最適な補強方法を検討する。最後に、接合部補強を施した2層軸組架構の静的水平加力実験を実施し、補強の効果を確認する。
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