本年度は、昨年度得られた梁せいに対して1/15~4/5の孔径を設けた対称異等級構成集成材と1/15~1/3の孔径を設けた同一等級構成集成材の曲げせん断試験結果を用いて割裂耐力の検討を行った結果、以下の知見が得られ、十分な成果を得ることができた。 ①同じ曲げヤング係数の対称異等級構成集成材と同一等級構成集成材で孔周りに作用する応力度が異なることから、対称異等級構成集成材の有孔梁に国内外で提案されている様々な耐力算定方法をそのまま適用することは難しく、調整係数等が必要であることがわかった。 ②FEMで得られた孔周りの応力から潜在的な破壊領域の一定長さの平均応力を用いて割裂耐力を推定する方法では、対称異等級構成集成材および同一等級構成集成材で孔が小さい場合や大きい場合に、割裂耐力を高めに推定することがわかった。 ③平均応力を用いて割裂耐力を推定する方法に、潜在的な破壊領域の一定長さを補正する方法と破壊面と垂直方向のある一定長さに対する寸法効果を考慮する方法を取り入れることで、せいや孔の大きさ及び樹種の違いに関わらず初期クラック荷重を精度良く推定できることがわかった。 ③の方法については対称異等級構成集成材と同一等級構成集成材のどちらについても初期クラック荷重を精度良く推定できるが、FEMで孔周りの応力を求める必要があるため、耐力評価法としては運用が難しい。今後は、設計に用いることができる簡易な耐力評価法を提案するために、対称異等級構成集成材と同一等級構成集成材に対応した孔周りに作用する応力度分布の定式化を行い、③の方法から有孔梁の耐力評価法を導く予定である。
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