研究課題/領域番号 |
18K13868
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
寺本 篤史 広島大学, 工学研究科, 助教 (30735254)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ひび割れ / ひび割れ開閉 / 壁面温度 / 画像相関法 |
研究実績の概要 |
本研究は,コンクリート構造物に生じたひび割れを画像により認識する技術の発展形として,そのひび割れの開閉挙動を,該当部材の条件や周辺環境に即して予測する手法を提案することを最終目的としている。 目的達成のためには,ひび割れの開閉挙動に影響を与える因子を明らかにし,その程度を把握しなければならないが,本年度はまず,気候の影響を把握するために北海道および広島地域において建築構造物の壁部材に生じた乾燥収縮ひび割れの開閉量,ならびに壁面温度および周辺の温湿度の日変動,年変動をモニタリングした。 モニタリング結果を解析したところ,ひび割れ開閉量に及ぼす因子において壁面温度の影響が支配的であり,壁面温度の上昇に伴って,ひび割れが閉じる方向に推移することが示された。また,この傾向は常温域では地域によらず同一であるが,壁面が長時間にわたって氷点下に晒された場合,異なる挙動を示した。 一方で,壁面温度の情報のみからひび割れの開閉挙動を予測することは不可能であり,その要因の一つとして,部材内の温度分布(部材の熱伝導率)の影響が推定された。すなわち,部材内に温度分布が生じている場合,壁面が面外方向へ反り変形が生じ,部材の反り変形によってひび割れの開閉挙動が影響を受けると考えられた。以上のことより,壁面のひび割れ開閉挙動を予測する場合には,壁面温度および構成材料の熱伝導率が必要であると考えられた。 また,マイクロスコープによって連続的に取得した画像から画像相関法によりひび割れの開閉を計算可能であり,従来より容易にひび割れ開閉挙動を取得する手法を提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はまず,類似の形状を有するひび割れに対して,外的要因(温湿度,降水量など)が異なる場合のひび割れ開閉挙動の影響を明らかにすることを目的としたが,壁面への雨掛かり量を実験的に取得することが難しく,降水量の影響については直接的に評価することができなかった。 一方で,降雨のある日,ない日に関わらず,壁面温度とひび割れ開閉量は概ね同様の傾向を示したことから,壁面温度が支配的な要因であるとの結論が推察された。 以上より,完全に予定通りとは言えないが,目的に対しては概ね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は,異なる発生原因によって生じたひび割れの開閉挙動の因子を明らかにすることを目的とする。本年度対象とするひび割れ発生原因はASRであり,ASRによるひび割れは乾燥収縮ひび割れとは異なり部材を貫通したひび割れではないと考えられている。 ひび割れの断面方向への進展形状が,ひび割れ開閉挙動に及ぼす影響を明らかにすることで,ひび割れの形状と外的要因の組合せによって,ひび割れ開閉量を簡易的に予測する手法を提案する。
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