本研究では,コンクリートに生じたひび割れの時間依存性挙動に影響を及ぼす因子である1)壁面温度,2)降雨,3)ひび割れ発生原因(乾燥収縮,ASR),4)ひび割れ幅,5)外部部材による拘束,6)凍結などを対象に,実構造物のモニタリングを実施した。その結果,以下の結論が得られた。 [1]実構造物の貫通ひび割れの開閉挙動は,壁面温度の変化に依存し,壁面そのものの温度変化によるコンクリートの膨張・収縮ならびに,壁断面に生じる温度分布に起因する壁のそり変形の影響を受ける。上記の機構により,ひび割れの開閉挙動は,壁面温度の日変動と年変動とで,逆方向に動く場合がある。[2]同じ温度環境においても,ひび割れの方向性,幅,対象部材の拘束状態によってひび割れの開閉挙動は異なる。また,貫通ひび割れと貫通でないひび割れでは,温度の上昇(低下)時のひび割れ挙動が逆になる傾向が得られた。[3]降雨のあった日の屋外側のひび割れは,閉じる方向に挙動する。この挙動は,降雨によって含水率が上昇したコンクリートが膨張することで,ひび割れが閉じる方向に動いていると考えられる。[4]北海道のモニタリング結果より,氷点下において,壁面温度とひび割れ開閉挙動の関係が逆転する結果が得られた。この現象について,既往の文献から挙動の要因を推定したところ,対象壁面のコンクリートの細孔構造は粗大化しており,0℃近辺で負の線膨張係数を持つ状態になっている可能性が考えられた。 以上の測定結果のうち,ひび割れ発生原因,ひび割れ幅,外部部材による拘束に関しては,数値解析によっても同様の傾向を再現できており,RC構造物の一般的な傾向であると推察された。
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