一般に,ひび割れ補修材と躯体の劣化機構として両者の界面の引張破断を前提とするなら,ひび割れ幅が最大となる時期に補修材の注入を行い,主に圧縮応力が作用するよう配慮した施工が望ましい。しかしひび割れ開閉挙動を適切に把握していない場合,上記の理想的なひび割れ補修工法は多くの場合実施されていない。 本研究の成果を基にすると,補修材には圧縮・引張が繰り返し作用し,加えて補修材そのものの温度変化による物性の変化も考慮しなければならないことがわかる。つまり補修材に十分な耐久性を期待する場合には,想定するひび割れ開閉挙動を正しく理解し,それに適した機能を有する材料の選定が重要であることが改めて確認された。
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