研究課題/領域番号 |
18K13870
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
鷹野 敦 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (70778092)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 建築構造・材料 / 木質材料 / CLT / 耐火 / 断熱 |
研究実績の概要 |
前年度から継続し、耐火性能として1時間準耐火と、断熱性能として、省エネ法が定める地域区分1-2地域と3-7地域での外壁熱貫流率基準(0.35W/m2K, 0.53W/m2K)を同時に満たすCLTのラミナ構成を検証するため、小型試験体による加熱実験と熱伝導率試験を行い、データを収集した。また、一部、JASの規定外のラミナ構成については、面外曲げ、面外せん断および圧縮強度の試験を行い、構造性能について確認した。 まず、最小限の加工をラミナに施すことで、断熱性能を効果的に改善する手立てを実験により検証した。ラミナの表面の炭化やミーリング処理、ラミナへの有孔加工が、ラミナの熱伝導率に与える影響を実測した。ラミナの物性は個別性が高く、また、測定機器の特性もあり、効果を定量的に把握することに苦心したが、有孔加工の効果が大きく、加工や性能の管理もしやすいことがわかった。有孔加工によりラミナに内包される空隙部分の熱抵抗は、概ね0.18~0.20m2K/Wとの結果を得た。 次に、熱伝導率試験の結果をもとに、目標とする熱貫流率を満たすラミナ構成(対称構成)を設定し、小型のマッフル炉を用いた加熱試験を行った。ここでは、JASに準拠する構造層としてのCLTの両面に耐火・断熱層を担うラミナを付加する「付加型」と、ラミナ厚を統一し、全層で構造・耐火・断熱性能を担保する「一体型」の2つのモデルを想定した。各モデル、2種類のラミナ構成を設定した。各ラミナ間に熱電対を設置し、60分間の加熱中の温度上昇を測定するとともに、燃え抜け等の有無を目視で確認した。付加型の熱貫流率0.53W/m2Kのモデルのみ、60分の準耐火性能の確保に不安が残る結果となった。 一体型のラミナ構成については、上記の構造強度試験を行い、性能の確認を行った。概ね、同厚の杉のCLTと遜色のない性能が担保されていることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は、目標とする熱貫流率をみたし、かつ、準耐火性能の担保を確認する実大加熱炉での性能試験の実施を目標としていたが、断熱性能(熱伝導率)の定量的な測定に想定以上の時間がかかったことと、期待する性能の向上を実現する方法の検証に時間を要したことで、研究の進行が若干遅れた。 ただ、今年度の研究活動により、上記の問題は概ね解決することができ、また、経済性や材料の取得容易性など、部材開発における他の重要な側面を考察することもできたため、次につながる成果を得たと言える。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の成果をもとに、当初の研究計画を若干変更し、より効率的に断熱性能を向上させる方法を引き続き検証するとともに、耐火性能(特に燃え止まり)を実現するための基礎的な実験を行う予定である。熱貫流率を満たす準耐火、耐火仕様のラミナ構成について、見通しを立てることを目標とする。 具体的な研究推進の方策として、研究補助員の増員を予定している。また、これまでの経験を踏まえ、断熱、加熱、構造実験の方法を効率化し、試験体の製作や実験時間の合理化を図りたいと考えている。小型試験体での検証精度の向上を図るため、試験のセットアップの見直しも行う。 段階的に目標を定め、可能な限り多く実験を実施しデータを収集することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗状況を鑑み、小型試験体での基礎試験の継続実施を優先したため、実大試験の実施経費の一部として見込んでいた予算が残った。 実大加熱炉での実験を引き続き2020年度に計画しており、繰越となった予算は、当初計画通り、実験経費として使用する予定である。
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