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2018 年度 実施状況報告書

人工知能を応用した塩害環境評価システムの開発

研究課題

研究課題/領域番号 18K13871
研究機関琉球大学

研究代表者

崎原 康平  琉球大学, 工学部, 助教 (20647242)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード塩害 / 飛来塩分 / 環境作用 / 機械学習 / 人工知能 / 耐久性 / 維持管理 / 数値解析
研究実績の概要

四方が海に囲まれた日本において,海岸付近の鉄筋コンクリート構造物は,海から供給される飛来塩分による塩害の影響を受けやすい.特に,北西からの強い季節風を受ける日本海側や多くの台風が通過する沖縄では,海から供給される非常に多くの飛来塩分により,鉄筋コンクリート構造物の重大な欠陥を引き起こす要因となるため,塩害に対する合理的な施工設計・維持管理方法の確立が求められている.
著者らはこれまでに,長期間観測した海岸付近の飛来塩分と風況(平均風速,最多風向)の関係から,海岸からの距離および標高を考慮した簡便な飛来塩分輸送推定式を提案している.しかし,この提案式の推定精度は,様々な環境作用(海岸形状,風況,波浪,障害物の有無等)が複雑に関係しており,環境作用と飛来塩分の対応は必ずしも明確ではない.
一方,近年ではAIやICTといった最先端情報技術の活用が注目を集めており,その中でもLSTMやランダムフォレスト等の機械学習は,過去に実測した飛来塩分や,気象・波浪の各データがあれば,それらデータを学習させることによって,飛来塩分の定量評価や予測が出来る可能性を有している.
そこで本研究では,飛来塩分が比較的多いとされる沖縄および新潟で長期間現地観測されたデータと,公開されている気象・波浪等の各種情報から,機械学習を用いて海岸付近で発生する飛来塩分(以後,発生飛来塩分と称す)の予測について検討を行った.その結果,発生飛来塩分が多い期間における予測値は,実測値の傾向を概ね捉えられることが確認されたが,発生飛来塩分が少ない期間においては,その予測精度は良くなかった.
今後の課題としては,パラメータチューニングの実施や海岸形状や防波堤の有無等の特徴量を考慮することで,発生飛来塩分の予測精度の向上を図る予定である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成30年度では,採用する機械学習アルゴリズムが発生飛来塩分の推定精度に大きく影響することが考えられたため,最適な機械学習アルゴリズムについて検討を行った.その結果,長期的な時系列データを取り扱うことができるLSTM(Long Short Term Memory)と,過学習が起こりにくく,発生飛来塩分予測に影響を与えると考えられる各特徴量(平均風速,最多風向,波浪など)の相対的な重要度を簡単に求めることができるランダムフォレスト(Random Forest)の2つの機械学習を用いて,発生飛来塩分予測を行うこととした.また本研究では,国土交通省や各地方整備局等によって構築・運営されている全国港湾海洋波浪情報網(以後,NOWPHASと称す)を機械学習の学習データとして使用することを検討した.しかし,今回発生飛来塩分を測定した各地域と最寄りのNOWPHAS観測点までは距離が離れていたことから,発生飛来塩分の測定地点とNOWPHAS観測点の波浪条件が異なる可能性が考えられた.そこで本研究では,発生飛来塩分測定地点とNOWPHAS観測地点の波浪解析を実施し,両地点の波浪条件を確認した上で,機械学習による発生飛来塩分予測の検討を行った.その結果,以下の3つの知見が得られた.
(1)沖縄の辺野喜では那覇港,新潟の名立大橋では直江津港の最寄りの各NOWPHAS観測点で得られる波浪情報を使用しても問題ないことが確認された.
(2)LSTMおよびランダムフォレストによる発生飛来塩分の予測結果は,発生飛来塩分が少ない夏季においては,実測値の傾向を概ね捉えることが確認された.
(3)発生飛来塩分予測における特徴量の重要度は,地域によって異なることが示唆された.
以上のことから,本研究は概ね順調に進展していると判断される.

今後の研究の推進方策

本研究では,沖縄および新潟で長期間現地観測されたデータと波浪情報から,機械学習を用いて発生飛来塩分予測を行った. LSTMおよびランダムフォレストによる予測結果は,発生飛来塩分が多い期間においては実測値の傾向を概ね捉えられることが確認された.しかし,発生飛来塩分が少ない期間の予測精度は良くなかった.今回,LSTMおよびランダムフォレストで必要な各種パラメータは,使用したプログラム(Python)の標準値を用いたが,今後は上述のパラメータのチューニングを行うことによって,その予測精度を向上させることを検討する予定である.また,今年度の研究では,発生飛来塩分の予測精度に影響を与えると考えられる海岸形状や防波堤の有無といった特徴量を考慮していないため,これら特徴量も考慮することで予測精度の向上を図る.
さらに,予測された発生飛来塩分と数値シミュレーションを連携させ,飛来塩分輸送状況を誰でも簡単に把握できる一連の塩害環境評価システムを構築することを最終目標とする.

次年度使用額が生じた理由

(理由)
物品購入および旅費の使用額において,当初予定していた額から433,024円の残金が残った.この残金は無理せず次年度の物品購入または旅費へ有効利用する.
(使用計画)
平成31年度は,前年度に残った433,024円も含めて適正な使用を行う予定である.

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] A Basic Study on Evaluation of Airborne Chloride Ions Transport Situation in Thermal Power Plant2019

    • 著者名/発表者名
      Kohei SAKIHARA, Yoshitaka ISHIKAWA, Fuminori NAKAMURA
    • 雑誌名

      Proceedings of the International Conference AILCD 2019

      巻: 1 ページ: 259-262

    • 査読あり
  • [学会発表] 火力発電所における塩害劣化予測システムの構築に関する基礎的研究(その4.計6箇所の風況の再検討)2018

    • 著者名/発表者名
      矢島典明,石川嘉崇,横尾智行,崎原康平,山田義智
    • 学会等名
      2018年度日本建築学会大会(東北)学術講演梗概集
  • [学会発表] 火力発電所における塩害劣化予測システムの構築に関する基礎的研究(その5.瀬戸内地域および関東地方における火力発電所構内の暴露期間1年間の飛来塩分量の測定結果)2018

    • 著者名/発表者名
      横尾智行,石川嘉崇,矢島典明,崎原康平,山田義智
    • 学会等名
      2018年度日本建築学会大会(東北)学術講演梗概集

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公開日: 2019-12-27  

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