研究課題/領域番号 |
18K13872
|
研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
陶山 裕樹 北九州市立大学, 国際環境工学部, 准教授 (20507876)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | コンクリート / 外観 / 表面気泡 / ひび割れ / コールドジョイント / アンケート調査 / ロジスティック回帰 |
研究実績の概要 |
コンクリートの外観に関する既往の知見は、現場の経験則を根拠としたものが殆どであり、その多くが定性的な表現にとどまっている。本研究では、アンケート調査およびロジスティック回帰分析を通じて、コンクリートの外観が一般的な消費者の心理に与える影響を定量化したうえで、外観に関する管理基準値を導出することを試みた。平成30年度には主に以下の研究成果が得られた。 (1)代表的な副産物系混和材であるフライアッシュを用いて色味付けしたコンクリート供試体を作成し、N=1000の調査・分析を通じて、色味の変化による消費者の環境マインドの低減を定量化した。その結果、副産物をリサイクルしたコンクリートが優位に選択されるとき、表面の明度(L*a*b*色空間)が基準コンクリートに対して-8.0より高く、メトリック彩度が6.5より低い範囲に収まることが明らかになった。この範囲を普通ポルトランドセメントの25%をフライアッシュに置換する条件下で満足するためには、使用するフライアッシュの明度を普通ポルトランドセメントに対して-0.26超、メトリック彩度を0.38未満の範囲に収める必要がある。 (2)コンクリートに生じた表面気泡の外観上の評価に与える影響を定量化し、外観上の管理基準値を導出した。N=2000の調査・分析の結果、表面気泡の面積比および被験者の性別が外観の評価に与える影響が認められた一方、被験者の年齢、視力、観察距離、気温、湿度および照度が外観の評価に与える影響は認められなかった。また、50%以上の消費者が「表面気泡が気になる」、「美観上許容できない」および「構造上不安を感じる」と回答するときの表面気泡の面積比は、それぞれ男性において0.520%以上、0.687%以上、1.194%以上、女性において0.310%以上、0.442%以上、0.868%以上と推定された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請書に記載した研究計画では、副産物使用したコンクリートにおける色味の許容範囲の定量化までを平成30年度の計画とした。色味の許容値に関する十分な研究成果を発表できたことに加え、次年度以降の課題である表面気泡の許容値に関する成果まで得ることができた。進捗状況は、当初の計画を上回るものと考えられる。 当初予期していない結果として、コンクリートの外観評価に被験者の視力および観察距離があまり影響しなかったことが挙げられる。この結果は、以降の調査を簡便にする方向に働く。
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度の研究を通じて、調査・分析の基礎的手法が確立した。今後、表面気泡の評価に適用した手法を、ひび割れ、コールドジョイントおよび砂すじ等の評価に応用する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
僅かに生じた残金を無理に調整しなかった。残金は次年度の物品費に充てることを計画している。
|