本研究は、各環境下におけるシーリング材の劣化のメカニズムを定量的に明らかにし、シーリング材の新たな耐久設計法を提案することを目的としている。シーリング材は、気象とムーブメントの複合作用により劣化が進行し、一般的には紫外線量が多く、外気温が高い南方で劣化が早まると考えられているが、既往の研究で行われた10年間の動暴露試験結果より、寒冷地で劣化が卓越する場合がある事が明らかとなった。そこで本研究は、(1)寒冷地で劣化が著しくなる現象を促進的に再現させる実験(促進試験方法の開発)、(2)温度変化と目地の動きを同期させた状態での、シーリング材の荷重測定装置の開発、(3)実験結果を基にした、寒冷地で劣化の著しかった劣化メカニズムの解明、(4)上記メカニズムを踏まえた、シーリング材の新しい耐久設計法の提案の4項目を中心に進めるものである。 2018年度は、気象による劣化を促進試験機で与え、ムーブメントによる劣化は手動で与える方法を採り、動暴露試験状況に近似した状況を再現する試験方法について検討を行った(1)。 また、繰り返しのムーブメントを発生させた際のシーリング材の応力測定装置を開発し、応力緩和率の異なるシーリング材を用いムーブメントを与えた際の応力状態を明らかにした(2)。2019年度は、応力測定装置の改良(2)及び、温度環境を変えた場合の応力状態を明らかにした(3)。2020年度は、2年間で得られた実験結果及び新たに行った促進紫外線暴露下における実験を基に、劣化のメカニズムについて検討を行った(4)。更に、劣化が見られたいずれの試験体でも、試験体の端部に劣化が損傷し、それが試験体の内側及び深さ方向に進行する現象が見られたことから、実際の建築物のシーリング材に近い状態での評価手法として、端部のない試験体での評価方法を開発した。
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