竜巻は構造物に破壊的な荷重をもたらす強風現象で、近年その工学的評価が進みつつある。一般的な強風現象では、10分間平均風速に加えてその平均からの偏差として定義される風の乱れに関する指標も重要となる。しかし、竜巻の3次元的な流れの特殊性に起因して、十分な理解が妨げられている。そこで、竜巻現象を包含する多様な各スケールのそれぞれにおいて有効な数値計算技術を駆使し、竜巻渦の流体特性に関する知見を取得した。並行して、一般的な境界層流れにおける乱れの特性を把握するための数値検討を行った。これらのデータに基づき、対比的に分析を行うことで現象理解を進め、工学的評価につながる知見を創出した。 2018年度:建物単体にかかる風圧力を把握するのに適切な格子条件を探索するためLarge-eddy simulationと呼ばれる計算手法により感度解析を行った。並行して、大気境界層にて生じる風速変動特性を数値気象モデルの高解像化により把握した。 2019年度:冬季に頻発する日本海の竜巻について気象規模での現象解明を行うための数値気象計算を行った。また、一般的な境界層流れの有する風速変動特性を理解するために、中立成層条件を想定した数値計算を行い、詳細な風速時系列データを取得した。 2020年度:竜巻と都市空間が共存する条件において、低層部の竜巻渦が都市などの障害物と接触することにより変化する風速特性を、数値計算により明らかにした。 2021年度:一般的な境界層流れのガストファクタの統計的性質や評価モデルの妥当性を明らかにした。加えて、構造物および周辺の環境が風に及ぼす変化傾向を評価する手法を提案した。 以上の検討から、多スケールの現象である竜巻について包括的な検討を行い、スケール別の評価手法の妥当性検証、現象解明、評価法の提案を行った。
|