住宅居室を想定した空間において室間遮音性能の検討を行うため,RC造実験建物内に住宅居 室の形状および室内仕上げを概略的に再現した室を整備し,実験を行った。測定対象とした界壁構成は,RC造集合住宅で一般的に想定される界壁構造として,クロス直貼り仕上げを想定し界壁に仕上げを設けない条件(RC壁),ならびにRC壁の両面にふかし壁を設置した条件(複合壁)を対象とした。以下,得られた結果をまとめる。 提案手法を適用し,展開した音場の再構成や入射指向性について検討した結果,同手法が音場の特性把握において妥当な精度を有していると考えられた。 入射音場の違いにより低音域の遮音特性が変化することを確認し,とくに複合壁については遮音等級へ影響する可能性が示唆された。 RC単層壁における低音域の透過音には室間のモードのマッチングの影響があり,とくに壁面垂直入射方向に近いモードの近接度が強く作用することがわかった。 複合壁の性能を,RC壁単体の音響透過損失Rと,ふかし壁の付加による音響透過損失改善 量ΔRに分離した結果,入射音場の違いにより,RC 壁単体のRのほか,ΔRについても変化が生じることを明らかにした。提案手法を用いて複合壁の斜入射吸音率を観察した結果,複合壁の低音域共鳴透過が,壁体の斜入射共鳴周波数と入射特性とのマッチングにより影響され,壁の垂直入射共鳴周波数付近で強い垂直入射がある場合ΔRが低下する傾向を確認した。
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