本研究は「空調熱源システムの長期高効率運用のための異常検知診断モデルの開発」と題して、本来のシステム性能を発揮させた上で得られたデータに基づき正 常状態のシステム挙動を定義するとともに、そこらからのずれよりシステム異常を検知、またその原因を診断することで、性能低下によるエネルギー効率低下や 稼働停止等のリスクの削減を図る取り組みである。異常検知のためにはまずシステムの本来の性能を把握することが優先されるべきである。当該年度には比較的 シンプルな空調熱源システムの対象とし、そのシステム全体の挙動に対する再現度の高い物理モデルを構築した。そのシミュレーションを用いて、7種類の異常 ラベル付きデータセットを作成し,これを異常データベースとして学習データ・テストデータを用意した。次にこのデータベースを詳細に分析し,システム挙動 の異常が合理的に再現できているか確認した。そして,従来のニューラルネットワークに対して高い性能を発揮できる深層学習の代表的な手法である畳み込み ニューラルネットワーク(以下、CNN)に作成した学習データを与え、学習したCNNに作成したテストデータと実際の計測データを入力することで,CNNによる異 常検知診断を試みた。また、実際データに対するの検知診断の確からしさを高めるための、より適切なデータ前処理手法 を提案することと、提案したデータ前処理手法を採用して実際データに不具合検知診断を実施し、その有効性を明らかにした。
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