本研究は、以下の目的で行った(1)蒸暑地域に設置されたアースピット内の微生物汚染状況を明らかにすること。(2)アースピット内部の温湿度環境を測定し、微生物の発生しやすい環境かどうかを確認すること。(3)濾過捕集法によるサンプリングを同時に行い、測定方法の違いを確認する。 本研究では、これまで日本建築学会環境基準(AIJES-A008-2013)に則った方法で、アースピットを有する建築物において、空中浮遊菌サンプラーを使用して浮遊真菌を採取し、解析を行った。2022年度は2021年度に引き続き、セルロース混合メンブレンフィルタを用いた濾過捕集法による同時測定を行った。さらに、2021年度に行われた改修工事の対策効果確認も行った。その結果以下の知見が得られた。 (1)空中浮遊菌サンプラーで測定した浮遊真菌濃度は、全ての測定点で日本建築学会規準(維持管理基準:50CFU/m3)を超えていた。特に、アースピット内は外気よりも高濃度で、I/O(室内濃度/外気濃度)比は14~18倍と高かった。(2)空中浮遊菌サンプラーメンブレンフィルタ欲集の浮遊真菌濃度は、空中浮遊菌サンプラーのが高い傾向となり、2021年度と傾向が異なった。(3)アースピット内の温湿度環境は、6月(梅雨期)は室温21~22℃、相対湿度は80~100%、9月(冷房期)は室温25~26℃、相対湿度は85~100%の範囲内にあり、期間を通して真菌の増殖に適した環境となっていた。(4)対策工事後の室内浮遊真菌濃度は変わらず、現時点で対策工事の効果はみられなかった。
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