研究課題/領域番号 |
18K13882
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
對馬 聖菜 早稲田大学, 理工学術院, 講師(任期付) (10801251)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 生体発散物質 / 身体活動 / 知覚空気質評価 / 化学分析 / チャンバー実験 / 室内空気質 |
研究実績の概要 |
生体発散物質は、主たる室内空気汚染源であり、必要換気量を決める際の基とされている。本研究では、皮膚由来の生体発散物質が知覚空気質に与える影響に着目し、良好な室内空気環境を省エネルギーで実現するための原理と手法に関して追究するもので、2018年度は以下の研究課題を推進した。 1.身体活動が生体発散物質放散量および知覚空気質に与える影響に関する被験者実験:体臭として知覚される生体発散物質の放散量は、温熱環境、身体活動による代謝量変化、生活習慣等の様々な要因により変化する。特に、皮膚腺由来、血液由来の体臭物質の放散量は身体活動および温熱環境変化による影響が大きいことが既往文献調査より予想された。そこで、知見の少ない身体活動影響について、①安静条件②2.0met運動条件③2.5met運動条件を設け、ステンレス製チャンバーにて被験者実験を行った。結果、代謝量の増加によりチャンバー内の臭気強度が有意に増加し許容度が有意に低下した。また、代謝量の増加によりFormaldehyde、Acetaldehyde、Acetoneの濃度が有意に増加したが、増加量は一様でなかった。Acetaldehyde濃度はCO2濃度よりも臭気強度との相関が高く、知覚空気質悪化に寄与する可能性が示された。 2.公立小学校における空気質環境の実測調査:上記1の内容を踏まえ、公立小学校教室で空気環境の実測を行った。その結果、測定前に身体を動かす授業が行われていた教室においてAcetaldehyde、Acetone濃度が高く、児童の代謝量上昇に伴いこれら2物質の放散量が上昇した可能性を示した。 3.小型の化学物質捕集装置を用いた簡易な測定方法の確立:在室者の皮膚表面から放散する化学物質を簡易に直接捕集するため、小型皮膚ガス捕集プローブを用いたトライアル実験を行い、今後の実験において使用可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時には予定していなかった「身体活動による代謝量変化」が生体発散物質放散量および知覚空気質に与える影響に着目して研究を実施し、新たな知見を示すことができた。2019年度の実施予定の実施設の環境調査について、公立小学校1校を対象に予め調査を実施できた。また、小型の化学物質捕集装置を用いた簡易な測定方法の有効性を確認し、2019年度の研究を円滑に行う準備ができた。研究成果は、2018年度室内環境学会に発表(平成30年室内環境学会 学術大会 大会長奨励賞)、また2019年度の建築学会大会および空気調和衛生工学会にて発表予定であり、対外発表も積極的に行っている。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画に従い、2018年度の研究成果を元に以下の課題A,Bを推進する。 研究課題A. 皮膚由来の生体発散物質の原因臭気特性に関する実験 温熱環境、身体活動による代謝量変化、生活習慣が皮膚発散物質放散量に与える影響を、小型の化学物質捕集装置を用いた被験者実験によりそのメカニズムを含めて明らかにする。 研究課題B. 実施設における温熱・空気質環境に関する実測調査 地域性を考慮し、日本における地域区分が異なる小学校において温熱・空気質環境に関する実測調査を行う。また空調換気設備の違いや運用方法の違いについても言及する。
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