生体発散物質は、主たる室内空気汚染源であり、必要換気量を決める際の基とされている。本研究では、皮膚由来の生体発散物質が知覚空気質に与える影響に着目し、良好な室内空気環境を省エネルギーで実現するための原理と手法に関して追究するもので、2020年度は過去2年間で実施した研究内容を纏め、以下のように対外的に成果を発表した。 1.睡眠不足に伴うストレスが生体発散物質放散量および知覚空気質に与える影響に関する被験者実験の結果を、2020年度日本建築学会大会および空気調和・衛生工学会大会にて発表した他、査読付き論文集である日本建築学会環境系論文集に投稿した。 2.身体活動が生体発散物質放散量および知覚空気質に与える影響に関して2018年度に実施した被験者実験の結果を、国際学会Roomvent2020にて発表し、Best Paper Awardを受賞した。同研究内容に関して、2018年度に実施した本実験および2019年度に実施した追加実験により得られた結果を取り纏め、現在論文を執筆中である。 3.生体発散物質の放散量およびが知覚空気質に与える影響に関して性別の違いによる分析を行った。2021年度の空気調和・衛生工学会の梗概として既に投稿済みである。 本研究成果は、新たな空調方式や衣服素材の開発・実用化への足掛かりとなり、エネルギー利用の効率化、生活環境・労働衛生等の確保などの経済・社会的課題への対応策となる。今後は、空気清浄機を用いた知覚空気質評価の標準試験方法が確立されていない現状を踏まえ、体臭による知覚空気質悪化を低減させる効果的な知覚空気質改善方法を空気清浄機使用方法の観点から検討していきたい。
|