研究課題/領域番号 |
18K13884
|
研究機関 | 国立研究開発法人建築研究所 |
研究代表者 |
野秋 政希 国立研究開発法人建築研究所, 防火研究グループ, 研究員(移行) (90535478)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 実散水密度 / 蒸発 / スプリンクラー / 発熱速度 / 気流 / 火炎 / 水滴 |
研究実績の概要 |
本研究では、火炎を通過して可燃物表面に到達する散水量に関する定量的知見を収集すると共に、物理モデルに基づく工学的推定手法を構築する。H30年度時点では以下の知見を得た。 (1) 火炎等からの熱による水滴群の蒸発に着目した実験について、プランチャーとニードルを用いて直径1.7mm~3.0mmの水滴を連続的に滴下する装置を作成した。また、その装置を用いて小規模火炎を通過する水滴の蒸発量に関する実験を実施し定量的知見を収集した。 (2) 火炎等の上昇気流による水滴群の飛散に着目した実験について、散水ヘッドの種類(散水量および水滴径)、散水高さ、火炎の大きさ(発熱速度)をパラメータとしたヘプタンの燃焼および散水を同時に行う実験を実施し、火源および火源近傍に散布される散水密度に関する定量的知見を収集した。実験の結果、次の知見を得た。実散水密度(火源の火皿に残る散水量)は火炎が無い(火源を燃焼させない)場合の散水密度に比べ低くなる傾向にあるが、火源近傍にある枡に供給される散水密度は逆に高くなる傾向にある。また、ある程度までは火炎が大きくなる(発熱速度が大きくなる)ほど実散水密度は低くなるが一定以上では大きく変化しない。いずれの散水ヘッドにおいても、散水高さが増加するほど実散水密度が低くなる傾向にある。 (3) 物理的知見に基づく散水密度の推定モデルについて、水滴の熱収支(火炎からの入熱と水滴の昇温・蒸発に伴う顕熱・潜熱の釣り合い)および水滴の重力と空気抵抗の釣り合いを考慮した水滴の蒸発と飛散軌道を同時に計算するモデルの原案を構築した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験の計画、必要物品の発注を含む準備、実施ならびにデータ整理と計算モデルの構築状況は概ね当初の計画通りである。
|
今後の研究の推進方策 |
以下に示す3項目について下記の通り研究を推進する計画である。 (1) H30年度に実施した実験の結果を物理的知見に基づく散水密度の推定モデルの改良に活用する。また、必要に応じて補足実験を実施する。 (2) 火炎等の上昇気流による水滴群の飛散に着目した実験について、先行研究の実験結果を含めH30年度に収集したデータを整理した上で、パラメータに対する目的変数(実散水密度)の変動が顕著となる条件(例えば、散水高さ0.5m以下の領域で実散水密度が大きく変化するなどの傾向がみられた場合は0.5m以下の散水高さの条件を充実させる、など)や下記(3)で構築しているモデルの計算値との整合性が良くない条件等について補足実験を必要に応じて実施する。 (3) 物理的知見に基づく散水密度の推定モデルについて、上記(1)および(2)の結果を踏まえ、モデルの改良を行う。特に(1)は熱収支をベースとした水滴の蒸発モデルの妥当性の検証およびモデルの改良に、(2)は水滴の力の釣り合いを考慮した飛散軌道モデルの妥当性の検証およびモデルの改良に活用する計画である。
|