研究実績の概要 |
本研究は“母子および高齢者の健康”に“都市・地域構造”がどのような影響を与えているかと言う点に着目した研究で, 医学領域と工学領域の複合的な視点から実施した研究である. 具体的には既に実施中の2つの大規模母子・高齢者コホート調査に参加し医学:〈健康データ〉,工学:〈地域環境〉〈個人環境〉〈社会環境〉のデータを得る.それらを地理情報システム(以下GIS)および統計解析を用い“母子および高齢者の健康”に関わる都市・地域環境の関係を明らかにする事を目的とした. 本研究は主に, 歩道の整備率や近隣の飲食店数, 道路の傾斜等の建造環境と算出し, うつ病や認知症, 死亡, 虐待などとの関連を示した. 代表的な成果として, 65歳以上の日本の高齢者76,053名を約3年間追跡し, 近隣の歩道面積割合と認知症発症との関係を調べました. 歩道面積割合は地理情報システムを用いて, 近隣の全道路面積に占める歩道面積の割合を算出しました. その結果, 歩道面積割合が低い地域に住む人に比べて, 高い地域に住む人の認知症リスクは45%低い結果となりました. また, 居住地域の都市度別(都会と田舎)に解析した結果, 都会でのみ歩道が認知症リスクの低さと関係していました. 都会では, 歩道が多く, ウォーカブルな地域に住むことが, 認知症発生に予防的である可能性が示されました. これらの成果は, 国際論文誌7報に掲載された。さらに, JAGES(日本老年学的評価研究)や研究代表者および, 共同研究者所属の大学を通してプレスリリースされている.
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